研究課題/領域番号 |
22K18894
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関 剛斎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40579611)
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研究分担者 |
塩貝 純一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30734066)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 歪み / 磁気異方性 / 自立型メンブレン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、自立型メンブレン上に磁性薄膜を単結晶成長させることで巨大歪みが磁気異方性、磁化、交換相互作用に与える影響を明らかにし、純粋な歪みだけで誘起される磁化スイッチングの実現を目的とし、(A) 自立型メンブレン上における磁性薄膜の単結晶成長条件の確立、(B) 二次元巨大歪み導入手法の確立、(C) 巨大歪みによる磁気および電気伝導特性の変調と反対称の交換相互作用の発現、および(D) 巨大歪みによる歪み誘起磁化反転の実現を実施項目として計画し、研究を遂行している。当該年度は、(A)および(B)の項目を中心に課題に取り組んだ。 (A)に関して、まずSrTiO3基板上に水溶性Sr3Al2O6犠牲層とナノメータ厚のSrTiO3層をパルスレーザー堆積法により成長する条件を確立し、その後にSrTiO3層上に強磁性Ni金属層あるいはFe4N層をエピタキシャル成長させるための条件を明らかにした。また、種々の磁歪材料をエピタキシャル成長させるために必要となる広範な薄膜成長の知見を得る目的で、磁歪材料の一つであるFe-Ga薄膜について研究を進め、Fe-Ga層のMgO基板およびGaAs基板上でのエピタキシャル成長に成功し、バルクと同程度の磁歪が得られることを確認した。 (B)に関しては、歪みを印加しながら磁気特性を評価するための手法の確立を目指し、試料を曲げるための凸型モールドを設計し、樹脂を用いて作製した。その後、メンブレンをカプトンテープに貼り付けそれを凸型モールドに固定することで、歪みを導入しながら磁化曲線を測定することに成功し、磁気異方性や磁化の値が歪みの導入量に依存して変化するという予備的な実験結果も得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sr3Al2O6犠牲層/ SrTiO3層の成長条件、さらにはその上の金属磁性層のエピタキシャル成長条件まで明らかにできており、歪み導入しながら磁気特性を評価する手法についても順調に研究が進展している。歪み導入により磁気特性が変化する実験結果も既に得られおり、2023年度より残りの研究項目を速やかに実行できる状況にある。したがって、当該年度の研究実施内容は計画を概ね達成するものであり、研究は順調に進展しているものと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に得られた薄膜成長および歪み導入手法に関する知見および技術をもとに、(C)および(D)の研究項目を中心に研究課題を推進していく。具体的には、圧縮歪みと引張り歪みを導入した際の磁化曲線の変化から磁気異方性や磁化の値に関する評価を進める。また、キュリー温度が低い材料について、歪みを導入しながら磁化の温度依存性(M-T曲線)を評価することも試みる。並行して電気的特性に対する歪みの影響についても電気的手法を用いた測定系の構築を進める。それらの知見を総合し、最終的には歪み誘起磁化反転の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は薄膜成長条件と磁気特性評価の研究項目に注力したため、電気的測定に必要となる機器の購入や電子線リソグラフィー関係の物品の購入を次年度に行うことにした。翌年度は、次年度使用額と合算してこれらの購入等を進める計画でいる。
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