研究課題/領域番号 |
22K18896
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 博之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40252259)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 窒化アルミニウム / 結晶成長 / 気相成長 |
研究実績の概要 |
(1)AlN単結晶ロッドの成長プロセスの熱力学的検討 本研究では、Fe-Al融液から蒸発するAlと窒素ガスが反応して固体のAlNが生成する。その際、AlN膜が、Fe-Al融液表面を覆ってしまうと,Alの蒸発が妨げられ、継続的な結晶成長ができない。そのため,融液表面ではAlNが生成しない条件を検討する必要がある.AlN生成反応の駆動力は,実験時の窒素分圧と反応の平衡定数およびFe-Al融液中のAlの活量によって支配される。各融液組成における駆動力の温度依存性を計算した結果、駆動力は、Fe-Al融液のAl濃度が上昇するほど,あるいは温度が低下するほど大きくなることが分かった。また,組成や温度によっては駆動力が負になる、つまりAlNが生成しない条件が存在することも分かった。この駆動力とAlの平衡蒸気圧を組み合わせて、Fe-Al融液表面では、AlN膜を生成させることなくAl蒸気を継続的に供給し,Al蒸気と窒素との反応によって、AlNを生成させる条件を明らかにした。 (2)AlN単結晶ロッド成長実験 上記の熱力学的考察に基づいて、Fe-Al合金から蒸発するAlを原料とした針状AlN結晶の気相成長を試みた。Fe-Al合金を入れたAlN坩堝を電気炉内に設置し、炉内を真空排気した後、Ar-N2ガスで置換した。その後、所定の温度に昇温し、一定時間保持して針状AlN結晶を成長させた。坩堝内壁には針状のAlN結晶が多数析出していた。この針状結晶は、SEM観察の結果、三角柱や六角柱等の多角柱形であることが分かった。六角柱状の結晶について、XRDを用いて結晶の極点図を取得したところ、長手方向が[001]方向であり、側面は(10-10)面から構成されている単結晶であることが分かった。また、この針状結晶のX線ロッキングカーブを測定したところ、その半値幅から配向性の高い単結晶であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの研究項目(1)AlN単結晶ロッドの成長プロセスの熱力学的検討および(2)AlN単結晶ロッド成長実験において、結果を出すことができており、おおむね順調に研究は進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、研究項目(2)AlN単結晶ロッド成長実験、について取り組みたい。前年度は、Fe-Al融液表面では、AlN膜を生成させることなく、Al蒸気を継続的に供給し,Al蒸気と窒素との反応によって、AlNが生成する条件を明らかにした。今年度は、この条件下において、AlN単結晶ロッドの直径を増大させるための研究を実施する。AlN単結晶ロッドの成長には、温度、Fe-Al融液の組成、窒素分圧が支配的な因子であるので、先ずは、単結晶ロッドの形態や成長速度に及ぼす温度の影響を調査する。また、温度の変化に応じて、駆動力を適正に保つためには、Fe-Al融液の組成を調節する必要がある。このため、単結晶ロッドの成長挙動に及ぼすFe-Al融液組成の影響について調査する。最後に、単結晶ロッドの成長挙動に及ぼす窒素分圧の影響を調査する。得られたAlNロッドについては、X線回折測定による結晶配向性の評価、X線ロッキングカーブ測定による結晶性の評価ならびに2次イオン質量分析による不純物の定量評価を行いたい。 これらの結果を総合して、結晶品質と成長速度を兼ね備えたAlN単結晶ロッドの最適な成長条件を明らかにし、成長機構についても考察を行いたい。最終的には、直径1 mm、長さ20 mmのAlN単結晶ロッドを得ることを目的としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、大学院生の研究活動にやや支障をきたす部分があった。今年度は、通常の大学生活を取り戻し、日々の研究活動ならびに学会における成果発表などにも積極的に取り組む予定である。
|