研究課題
本研究では,FIB-SEMシリアルセクショニングにより,変態メカニズムに直結した特徴であるラスマルテンサイトの形態3次元情報や晶癖面方位などの結晶学的特徴を詳細に解析し,その結果に基づいてマルテンサイト変態の新たな変態理論を確立することを目指している.本年度は,中炭素鋼 (Fe-2Mn-0.5C) を用いた.オーステナイト化処理後に水冷した試料を用いて,FIB加工により~25μm × 25μm ×25μm程度のピラー形状試験片を作製し,FIB-SEMシリアルセクショニングを実施した.また,シリアルセクションング後の試料から薄膜試料をFIBにより作製し,TEM・STEM解析を行った.FIB-SEMシリアルセクショニング結果からラス3次元形態を再構築したところ,それぞれのラスが複雑に入り組んでいるとともに,晶癖面とは異なる界面を持ったバリアントが隣接して生成している傾向を確認することができた.2面トレース解析によって晶癖面方位は(1 2 1)A面に近いことがわかった.この晶癖面方位は,正方晶性および格子不変変形の様式を考慮したマルテンサイト変態の現象論を用いることによって,その傾向をうまく説明することができる.一方で,晶癖面とは方位が異なるバリアント界面は(0 1 1)面に近いことが明らかとなった.TEM,STEMにより内部微視組織を観察した結果,内部に大量の変態双晶が存在していることを見出した.
2: おおむね順調に進展している
上述のように中炭素鋼を用いた解析を実施し,3次元形態や内部微視組織を明らかにすることができた.
昨年度に実施したIF鋼および低炭素鋼の結果と,本年度実施した中炭素鋼の結果を併せ,マルテンサイト変態機構の考察を行っていく.
本年度に使用しなかった消耗品代に充当する.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
ISIJ International
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10.2355/isijinternational.ISIJINT-2023-316
International Journal of Hydrogen Energy
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