研究課題/領域番号 |
22K18919
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 秀雄 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00237348)
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研究分担者 |
ダムナニョヴィッチ ヤスミナ 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (00754673)
兒島 孝明 名城大学, 農学部, 准教授 (40509080)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 抗体 / エピトープ / リボソームディスプレイ |
研究実績の概要 |
標的分子に結合するモノクローナル抗体を網羅的に取得することと、取得抗体のエピトープを決定することは、免疫系を理解し、それらを医療だけでなく様々に産業利用していくためには大変重要な技術課題である。ともに一つの抗体に対して作業を行う場合でも数ヶ月単位の時間が要する作業であり、相当のコストがかかる。したがって生体内に存在する10の16から18乗にものぼるレパートリーのうち、ある特定の抗原に対するほんの少しもの抗体とそのエピトープを「網羅的」に解析することは全く不可能であった。本研究では、抗体配列とそのエピトープ、網羅的に解析することを可能にする技術課題に取り組んでいる。本年度は、第一段階として1)リボソームディスプレイを用いたウサギおよびヒトFab抗体のライブラリー構築技術の開発とモデルスクリーニングの実施2)リボソームディスプレイ、次世代シーケンス、とバイオインフォマティクスによるエピトープ推定技術の開発に取り組んだ。1)については、ヒト・ウサギの抗体を網羅的にリボソーム上に提示できるプライマー設計とそのモデルスクリーニングを行った。腸内細菌を抗原としてそれに結合できるヒト抗体配列を、リボソームディスプレイにより濃縮した。2)については、ランダムペプチドライブラリーをリボソーム上に提示し、モデルとした抗タグ抗体に結合するペプチド配列を濃縮し、次世代シーケンス解析と独自に作成したPythonプログラムを用い、標的分子中からエピトープを推定する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗体配列とそのエピトープを網羅的に解析するFunctional Repertoire-Epitope Estimation Technology (FREE Tech)を実現するため、以下の実験を計画した、 1) 極微量スケールの水相反応場を大量にW/Oエマルジョンで作製し、その中で一細胞溶解、オーバーラップエクステンションPCRを行うことで、 各B細胞が元来有しているL鎖とH鎖のDNAを結合させる条件を検討する。その後結合したL鎖H鎖からなる抗体を提示するリボソームディスプレイを行い、抗原(ウイルスやがん細胞))に結合する配列を濃縮する。 2)大腸菌にクローニング、抗体を発現させELISAなどにより抗原に結合する抗体とそのDNAを、数百個単位で取得する。その後抗原結合能を有する数百の抗体配列とそのエピトープをランダムペプチドを提示するリボソームディスプレイやcDNAディスプレイを用いて、各抗体に結合するペプチドのDNA配列濃縮、抗体DNA配列とペプチドDNA配列を結合して、次世代シーケンサー(NGS)解析により解析するシステムを開発する。また膨大なNGSデータより、抗体配列とそのエピトープ配列のデータベースを作成する。 3) よりハイスループットなシステムを構築するため、大腸菌にクローニングする代わりに、エマルジョン技術を駆使した解析技術を開発する。 初年度は、上記の1)の項目のうち、リボソームディスプレイに関する基盤技術を確立した。さらに2)のエピトープマッピングに関しての主要技術・解析プログラムを開発しており、おおよそ順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)リボソームディスプレイ法により抗原に対する抗体セレクションのプロセスを確立する。 2)無細胞タンパク質合成系により合成したFab抗体に対してリボソームディスプレイによりエピトープマッピングを行う際の条件検討 3)上記のFab抗体を多サンプル(96種類程度)同時解析行うための、条件検討を行う。 4) エマルジョン中での抗体L鎖H鎖mRNA結合反応の条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した実験に必須な備品を、2022年度の大学プロジェクトの経費により共通機器として購入していただいた。そのため備品購入費用が余り、2023年度に使用することとした。2023年度はおもに次世代シーケンサー解析の費用が当初予定より嵩むため、それらに使用予定である。
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