研究課題/領域番号 |
22K18921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
境 慎司 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (20359938)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞培養 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
細胞マイクロアレイは、細胞応答の時間的な変動データを効率的かつ大量に採取するための強力なツールであり、多量のデータをAIで解析して新たな解決法を見出すことが可能となってきた今日では、その有用性はさらに高まっている。本研究では、既存の細胞マイクロアレイでは不可能であった、適切に培養液が交換された環境下で浮遊状態にて培養される浮遊細胞に関して、細胞応答の時間的変動データを様々な条件下で採取することを可能とする革新的な浮遊細胞マイクロアレイの創成を目的とする。 2022年度は、浮遊細胞を包括するマイクロドームの作製法について検討を実施した。特に、リンパ腫細胞を用いて、細胞の増殖速度やドーム内の酸素分布を調べるとともに、ドーム内に封入する細胞の初期濃度を制御することが細胞挙動に与える影響を調べた。また、その他の浮遊細胞として白血病由来細胞を用いた検討も行った。その結果、リンパ腫細胞、白血病由来細胞のいずれを用いた場合にも、ドーム内で半球状に増殖させることができた。また、低酸素の蛍光プローブを用い、ドーム内の低酸素状態の観察を行ったところ、ドーム中心部の細胞ほど低酸素状態となっていることがわかった。さらに、さまざまながん細胞において報告されているように、ドーム内に集積したそれらの細胞は、細胞培養ディッシュ上にて培養された細胞よりも高い抗癌剤耐性を示し、マイクロドームを用いた培養により、浮遊細胞に対して特異な培養環境を構築できることを実証することができた。さらに、複数の細胞包括マイクロドームを1枚のガラス基板上にアレイ状に配置し、全てのマイクロドーム内で細胞を増殖させることもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
補助事業期間内の実施事項として、マイクロドームの作製法の確立、マイクロドームに適した材料の探索、浮遊細胞を用いた有用性の実証、プリンタを用いたマイクロドーム作製の自動化、ドーム内への細管を使った物質の導入を挙げていた。すでにプリンタを用いたマイクロドームの作製と細管を用いたドーム内への物質の導入以外に関しては2022年度の検討でほぼ達成されている。このため、当初の計画以上に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間内の実施事項として、マイクロドームの作製法の確立、マイクロドームに適した材料の探索、浮遊細胞を用いた有用性の実証、プリンタを用いたマイクロドーム作製の自動化、ドーム内への細管を使った物質の導入を挙げていた。2023年度は、未達成であるプリンタを用いたマイクロドーム作製の自動化、ドーム内への細管を使った物質についての検討について精力的に検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたインキュベーションモニタリングシステムについて、適当なものを見つけることができなかった。このため、継続してマイクロドーム内の細胞を観察するための機器の選定を行う。
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