研究課題/領域番号 |
22K18922
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (20201642)
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研究分担者 |
長澤 寛規 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (30633937)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 分離膜 / 水蒸気透過 / 蒸気透過 |
研究実績の概要 |
典型的な多孔質セラミック膜は,多孔質支持体の上に粒子層,中間層および分離層からなる多層構造を有するため,製膜プロセスは極めて複雑になっているだけでなく,各層の透過抵抗も無視できない。本研究ではセルロースナノファイバー(CNF)の一次元構造体を利用した薄膜コーティングを提案する。さらに,ナノファイバー(NF)表面に存在する各種官能基(水酸基,カルボキシル基など)をシリカ前駆体であるアルコキシシランとの脱水縮合や金属イオン配位などを利用して,コアシェル型NFゾルを形成する。いずれのNFも直径数nm程度,長さ数100nmのアスペクト比100以上を有するため,多孔質支持体あるいは粒子層に直接コーティングすることで超薄膜製膜できる可能性があり,従来の製膜概念を大きく変える画期的製膜法となりうる。 2022年度は,高分子多孔質支持体として市販セルロースアセテート精密ろ過膜(CA,推算細孔径 0.2μm)を用い,CNFをキャスト法により,CNF/CA複合膜が製膜可能であることを明らかとした。さらに,80℃飽和水蒸気/窒素において経時変化を測定した結果,8h以上にわたって水蒸気透過率1.6×10-6 mol/(m2・s・Pa),窒素透過率3.3×10-9 mol/(m2・s・Pa)を安定して示し,さらに透過率比は490と優れた水蒸気選択透過性を示した。このことから,CNF膜が長期間安定して水蒸気を選択的に透過させることが可能であることが明らかとなった。さらに,供給湿度に対する水蒸気および窒素の透過率についても検討し,80%以上の高湿度域において水蒸気透過率は1.0×10-6 mol/(m2・s・Pa)以上の値を示した。一方で,湿度の低下とともに水蒸気透過率は低下し,30%以下では2.0×10-7 mol/(m2・s・Pa)程度を示すことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロースナノファイバー(CNF)を直接コーティングにより,多孔質支持体への薄膜製膜の可能性を明らかにすることができた。さらにに,水蒸気に対して高い選択透過性を示すことを,世界で初めて明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
CNF/CA膜の製膜最適化を図るとともに,透過特性評価として水蒸気/非凝縮性ガス分離に加え,アルコール(メタノール,エタノール,イソプロプルアルコール)などの有機物/水蒸気/非凝縮性ガスの3成分混合系分離への展開を図る。 コアシェルNFゾルに関しては,各種アルコキシシラン(bis(triethoxysilyl)ethaneなど)あるいは金属イオン(Zn,Ni,Cuなどの金属硝酸塩)を用い,CNF表面の水酸基やカルボキシル基へのグラフト条件(原料モル比,pH,温度;金属種など)の最適化と各種評価(FE-SEM,窒素吸着,FTIR,XPS,UV/Visなど)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施に必要な機器の検討およびその発注・納品が遅れたため,次年度使用額が生じた。2023年度では,早期発注を心がけ,研究の促進を図る。さらに,本研究に関連した国際会議(米国化学工学国際学会,2023年11月)での渡航費用および会議参加費用にも充てるよていである。
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