廃プラスチックによる環境汚染は世界的な問題であり、資源保護の観点からもそのリサイクルが求められている。従来のポリマーのリサイクルはエネルギー負荷が大きいため、温和な条件下でポリマーを解重合変換できる革新的な触媒系の開発が望まれている。前年度までにポリエステルに多く含まれる安定なC-O結合の変換に関する新しい触媒反応の開発を進め、酸化ジルコニウム担持Auナノ粒子触媒がアルキルエステル中のC-O結合を効率的にC-Si結合へと変換できることを明らかにしている。2023年度は担持金属触媒の活性向上を目的として担体効果を詳細に検討したところ、強度の強い酸点を高密度に有する酸化ジルコニウムを担体とした場合に反応がより効率的に進行することを明らかにした。改良された酸化ジルコニウム担持Au触媒を用いることで、構造の異なる様々なジシランが適用可能となり、脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートからシリル基の異なる様々なジシリルアルカンが合成可能となった。また、反応中のポリエステルの分子量分布変化をGPC分析によって詳細に追跡したところ、時間経過に従って分子量が徐々に減少したことからポリエステル中のC-O結合がランダムに変換されることがわかった。 さらに担持Au触媒がアルキルエーテルに含まれるC-O結合のシリル化にも有効であったことから、ポリエーテルの解重合変換も検討したところ、ポリテトラヒドロフランの解重合的シリル化可能であることも明らかにした。
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