研究実績の概要 |
コロナ放電とは、先の尖った電極のような曲率半径が極めて小さい電極の近くに不平等電界が形成され、その電界が局部的に絶縁破壊電界強度を超えることによって起こる放電である。帯電した物体に曲率半径の極めて小さな金属物体や人の指先が近づく場合や、金属容器のエッジ部分などに帯電物体が近づく場合にコロナ放電が発生する。本研究の目的は、コロナ放電と曲率半径の極めて小さい部位が多数あるナノポーラス金属を組み合わせることで、高効率な反応を起こすことである。 本年度は、使用エネルギーの小さいコロナ放電とナノポーラス銅(NPC)を組み合わせ、高い反応転換率を目指すことを目的とした。NPCの形状を変えたり貴金属で表面修飾するなどして、高い反応転換率を目指した。NPCの前駆体合金として、Cu-Mn板を使用した。銅テープで固定し、50℃の1.0mol 硫酸アンモニウム水溶液に投入して 15時間脱合金化した。作製したNPCを金溶液(0.001M,HAuCl4・H2O)に投入して表面修飾を行った。触媒反応装置のガラス管内部に触媒を設置し、反応ガスCO/O2混合ガス(CO:1.00%,O2:10.0%)あるいはNH3ガス(NH3:1%)を流した。静電気発生装置を用いて静電圧を触媒に印加し、反応ガスの濃度が安定したのち、ガスクロマトグラフィーで反応ガスの濃度を測定した。また、作製した触媒を走査電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。 30分間金溶液につけたナノポーラス銅のCO転換率は最大87%であった。また、NH3転換率は19%となり、室温でのアンモニア分解に成功した。今後の展望として、CO酸化反応のCO転換率を100%に近づけるために、より良い前駆体合金の探索やより良い貴金属修飾の探索などが挙げられる。
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