本研究は、有機-無機ハイブリッド型層状アルミノシリケートの特異な層間吸着能を応用し、低濃度バイオエタノールからエタノールを分離・濃縮する、新しい低コストプロセスの開発を目的とする。これまでの研究で、ビニルトリメトキシシランを原料とする層状アルミノシリケートKCS-27の合成に成功し、このKCS-27が一般的なバイオエタノールより希薄な3%エタノール水溶液からでもエタノールを層間吸着し、吸着したエタノールは大気下、室温で2時間程度でほぼ完全に脱離することを見出している。 本年度はKCS-27を超える性能を示す材料の発掘を目指し、様々な有機シランを原料に用いた層状シリケート材料開発を継続したが、希薄なエタノール水溶液からのエタノール吸着能においてKCS-27を超える物質は得られなかった。KCS-27は他の材料とは異なり希薄なエタノール水溶液にも高い分散性を示し、固液接触面積を広くとることができるため、希薄な水溶液からでもエタノールを吸着できるのだと考えられる。KCS-27のシリケート層表面のビニル基が一部開裂してシラノール基となっていることが確認でき、そのためシリケート層表面がより親水的になり、水への分散性が高くなったと考えられる。 KCS-27に吸着したエタノールは30℃までにほぼ脱離するのに対し、吸着した水は30℃から65℃の領域で脱離することが熱重量分析で明らかになったことから、30℃付近で脱離操作を行うことによりエタノールの選択的な回収が期待できる。また、エタノールの吸着・脱離操作を10回繰り返した後もKCS-27の結晶構造の劣化は見られなかった。バッチサイズの大きな合成でも問題なくKCS-27が得られることもすでに明らかにしており、これらの実験事実から、ラボスケールではエタノールの吸着濃縮は可能であり、今後のベンチスケールでの開発も期待できると考えられる。
|