研究課題/領域番号 |
22K18932
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三重 安弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00415746)
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研究分担者 |
安武 義晃 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20415756)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 電解合成 / 大腸菌 / 多孔質電極 / ビタミンD3 / シトクロムP450 |
研究実績の概要 |
生物エネルギー代謝の根幹である電子の流れを電気化学的に操作することで、微生物機能をより高次に活用して環境に優しい方法で有用物質を生産する概念が提唱されているが、電極-細胞間の電子移動(授受)は細胞膜による物理的な弊害により困難となっている。本研究では、これまでに申請者が見出した多孔性電極の作製法を活用し、高密度に微生物を含んだ多孔質材料を作製し、微細孔の強電場を利用して当該微生物機能を制御する方法を探索し、電気化学エネルギーを利用する新しいバイオものづくり基盤を構築する。 本年度(1年目)は、主に大腸菌を反応場とする物質変換反応系と評価系を構築することに従事した。物質変換反応として、入手が容易(安価)なビタミンD3(VD3)を医薬原料等として付加価値値の高い水酸化VD3に変換するシトクロムP450酵素反応系を選択した。当該酵素反応に必要な遺伝子群を大腸菌株に導入した発現系を構築した。作製した大腸菌を電子媒介物質存在下にて、一定電圧の電解反応を実施し、反応物をクロマトグラフィーにて分析したところ、特定の条件において水酸化VD3の生成が確認され、大腸菌の電気化学反応系および分析系を構築できた。また、金属細孔電極を用いた酵素反応の評価系構築を目的として、前記水酸化酵素の電気化学駆動による水酸化VD3生産の検討も行った。電極界面のコーティング、界面構造や電解電圧の影響など様々な条件を検討し、最適条件下において明瞭な水酸化VD3の生成を確認できた。金属細孔電極を用いて前述の有用物質変換反応を進行できることおよび定量評価可能であることを実証できた。更に、新しい微細孔金属電極の開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を進める上で重要な、有用物質変換反応場として作用する大腸菌株を構築できたこと、および金属微細孔電極を用いた物質変換反応の進行を確認することができたことからおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
構築した大腸菌の細孔内への固定化による電気化学法によるレドックス制御とそれに影響を及ぼす重要因子の特定や、大腸菌の改変などによる有用物質変換反応の効率化などを検討することで、当該目標を達成できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は主に大腸菌による有用物質生産の反応系と、その評価系の構築に大きく時間を要した。次年度は、電気化学反応系の検討や新しい微細孔金属電極の詳細解析を実施することを計画した。
(使用計画)これまでに構築した大腸菌の前記電気化学的計測の実施、新しい金属微細孔電極の解析や当該成果の発表等のための費用に充てる。
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