研究課題/領域番号 |
22K18935
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 将光 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70517854)
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研究分担者 |
河口 真志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90792325)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | スピン流 / トポロジカル絶縁体 / ディラック半金属 / 移動度 / pn接合 |
研究実績の概要 |
申請者らのこれまでの研究から、半金属や狭ギャップ半導体のスピン流生成効率はキャリアの移動度に依存し、大きなスピン流生成効率を得るには移動度を大きくすることが必要であることがわかった。また、pn接合やトランジスタの動作特性の観点からも大きな移動度を有する材料の確保は必須である。そこで本研究ではまず、分子線エピタキシー法を利用して移動度が高く、かつスピン流生成効率が高い、高品質の薄膜材料を開発する。 本年度はトポロジカル絶縁体Bi2Te3、Sb2Te3、さらには(Bi1-xSbx)2Te3などの化合物を分子線エピタキシー法を用いて作製した。X線回折、X線反射と反射高速電子線回折法(RHEED)を用いて作製した薄膜の構造を解析し、平坦で高配向の薄膜が成長していることを確認した。さらに作製した薄膜の磁気抵抗を調べた結果、シュビニコフ・ドハース振動が観測され、移動度が大きい試料の作製に成功した。ホール効果等を使ってキャリアの種類を調べたところ、Bi2Te3とBi-richの(Bi1-xSbx)2Te3では多数キャリアが電子、Sb2Te3とSb-richの(Bi1-xSbx)2Te3では多数キャリアがホールであることがわかった。(Bi1-xSbx)2Te3ではSbのドープ量(x)に比例してキャリア密度が変化する傾向があることがわかったが、ホール効果を使ってキャリア密度を評価する手法の精度に問題があるとする結果が最近報告されており、今後検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高移動度を有する試料等の作製に成功しており、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は作製した薄膜試料をベースに、キャリアの符号が異なるp型とn型の接合を作製する。作製したpn接合の輸送特性を評価し、接合の界面状態を明らかにする。また接合のスピン輸送特性や光学応答を調べ、スピンアンプ作製に向けた準備を行う。一方、最近問題となっているキャリア密度の評価手段についても調査を行い、精度良く決定できる手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定だった物品(計測用備品など)の仕様決定に時間がかかったため。
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