研究課題/領域番号 |
22K18956
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90391218)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | ナノシート / 遷移金属 / 水酸化物 / 電極触媒 |
研究実績の概要 |
鉄系層状複水酸化物(LDH)、すなわちGreen Rustのトポケミカル合成を行った。まず、雰囲気保護下で均一沈澱法により高結晶性ブルーサイト型Fe(OH)2を得た。ヨウ素を酸化剤としてFe(OH)2中の一部のFe2+を酸化させることによって、ヨウ素イオンがインターカレートするFe2+-Fe3+ LDHを変換させることに成功した。層間のヨウ素イオンをドデシル硫酸イオンに交換した後、ホルムアミドの中で剥離することで厚さ約0.8 nmの単層Fe2+-Fe3+ LDHナノシートを創製した。同じ均一沈澱プロセスの中で、Fe(OH)2にNiのドーピングを試み、Feに対してNiの含有量は最大25%までブルーサイト構造が保持されることが分かった。トポケミカル変換によりNi含有Fe系(Fe2+-(Ni2+)-Fe3+)LDHナノシートを調製した。得られた一連のNi含有Fe系LDHナノシートの酸素発生反応(OER)触媒性能を評価したところ、Ni含有量は約15%の時、1M KOH水溶液の中で290 mV@10mA cm-2という小さな過電圧を達成した。これは、報告された最も触媒活性高いNi2+-Fe3+ LDH触媒と同等な高性能である。 また、6配位(Oh)と4配位(Td)共存するCo2+-Ni2+-Fe2+水酸化物ナノコーンの合成に試みた。ヨウ素酸化により原子価2価と3価が混在するCo2+-Ni2+-Fe3+ LDHナノコーンに変換させることにより、OER触媒性能が大幅に増強されることが分かった。中心金属イオンの酸化状態と配位環境の高度制御は高性能ナノ触媒の開発にとって重要な戦略の一つとして確立されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規遷移金属水酸化物(Fe2+-Fe3+ LDHナノシート、Co2+-Ni2+-Fe3+ LDHナノコーン)のテーラーメイド合成に大きな進展が得られた。金属組成、原子価、配位構造、欠陥状態の高度制御により、触媒活性を大幅に向上する可能性を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きFe系(Fe2+-Fe3+、Fe2+-(Ni2+)-Fe3+)LDHの合成及び剥離を行うとともに、6配位(Oh)と4配位(Td)混在する多元系3d遷移金属(Co2+-Ni2+-Fe3+等)LDHナノコーンやナノシートのテーラーメイド合成を重点的に推進する。合成したナノ構造を酸素発生反応における触媒特性を系統的に評価し、反応機構を詳しく解明する。特に、6配位八面体サイトと比べ、上記ナノ構造中の不飽和な4配位または5配位サイトが反応活性点としての働き、活性増強につながる触媒反応メカニズムを系統的に考察する。原子分解能電子顕微鏡観察やX線光電子分光法(XPS)およびX線吸収微細構造(XANES)などの最先端分析・評価手段を活用することによって、配位不飽和サイト及びその酸化状態等が電極触媒反応に及ぼす影響を微視的スケールで明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は回転電極装置1台を新たに設置する計画であったが、購入予算は別途措置できた。コロナ禍が続く中で、旅費を利用することも殆どなかったため、未使用額が生じた。未使用額を翌年度の助成金と合わせ、研究業務員の謝金として使用する。
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