研究課題/領域番号 |
22K18963
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松井 淳 山形大学, 理学部, 教授 (50361184)
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研究分担者 |
永野 修作 立教大学, 理学部, 教授 (40362264)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | command surface / 加湿アニール / ナノ相分離 / アクリルアミド高分子 |
研究実績の概要 |
本研究では湿度に依存し配向構造が変化する高分子薄膜を液晶配向膜とした「water command surface」を実現し、湿度を可視化できるフィルムセンサーを構築する。water command surfaceの実現には湿度による表面の配向性が変化をモニターする必要があり、薄膜全体の配向性を検知するX線回折では不十分である。そこで、本年度は、湿度応答性高分子としてpolydodecyl acrylamide(pDDA)を用い、そのバルク膜の配向特性について偏光顕微鏡を用いて検討した。偏光顕微鏡のコノスコープ観察からpDDAは加湿数時間で垂直配向し、12時間以上では垂直配向性が乱れる事がわかった。一方で、これまでのX線回折測定では加湿時間に伴い垂直配向に由来するブラック反射のピークの増大と半値幅の減少がみられその値は12時間から24時間の間で飽和することがわかっている。この偏光顕微鏡とX線回折の結果の不一致を明らかにするために、膜断面の配向性を測定する手法を開発した。薄膜を薄くカットし断面の配向性を偏光顕微鏡より観察したところ、膜表面の結果と一致し、数時間で膜全体が垂直配向するのに対し、12時間以上では配向が乱れている領域が観測された。以上の結果より、pDDAは垂直配向構造を形成するためには膜面方向に収縮する必要があるため、長時間の加湿では膜にクラックが形成することで、全体の配向性が乱れたように観察されと結論づけた。X線回折ではもっとも周期性が高い部分の結果が反映されてしまうため、クラックが生じても配向性の高い領域を反影することと矛盾しない。そのため、water command surfaceにはdodecyl 側鎖が完全に垂直配向する領域ではなく、全体として垂直方向に配向する湿度・時間領域での変化を検知できる事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は配高度の異なるpDDAを配向膜として液晶配向を実現する予定であった。しかしながら、X線回折の結果とマクロな配向の結果が異なり、本年度はその原因を明らかにすることに注力したために、pDDAの配向を利用した液晶配向を実現できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
液晶配向膜として用いるpDDAを配向させるためにはこれまで少なくとも12時間の加湿が必要であると考えられてきた。しかし令和4年度の結果より3時間程度で全体が配向することが明らかとなった。これはwater command surfaceの高速応答の実現には非常によい結果である。そこで令和5年度ではpDDAを液晶配向膜とすることでネマチック液晶の垂直配向を実現する。予備的結果として一般的によく用いられるシアノビフェニル系の液晶では液晶温度が高過ぎるため、液晶セル内への導入が困難であることがわかった。そこで、液晶温度の低いネマチック液晶を用い垂直配向を実現する。
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