研究実績の概要 |
SrTiO3(STO)基板上の単層FeSe薄膜は、40 Kという高い転移温度Tcで超伝導を示すことが報告されている。本研究ではこれを単層Fe(Se,Te)薄膜に発展させ、 Fe(Se,Te)のトポロジカル超伝導特性を活用し、さらに自己組織的に磁性元素を並べることで、高温でマヨラナ正方格子を実現することが目的である。 本年度はこの目標に向けて、まずはSTO上の単層Fe(Se,Te)の成長様式の評価と物性評価を走査トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)測定で行った。これまでFeTeがFeSeよりも低温の300℃で薄膜成長し、400℃程度の加熱により壊れてしまうことが分かっている。これはSeの方がTeよりも薄膜作製において基板につきやすい傾向があることを示しており、作製された薄膜におけるSeとTeの比が実際に薄膜形成時の比と同じであるかも定かではない。まずはこれらの懸念事項を検討するため、Se:Te:Feの蒸着スピードを4:4:1にして、STO基板温度を300℃に設定して薄膜作製を行った。これまで報告されている、原子分解能像における高さの違いおよび単層と2層目のFe(Se_xTe_(1-x))の高さの違いを参考にして作製した試料のSTM像を丁寧に解析したところ、SeとTeの蒸着スピードと同じx=0.5の試料が形成されていることが分かった。さらにSTSによる電子状態測定によって単層ではFeSeと同じような超伝導ギャップが、2層Fe(Se_0.5Te_0.5)では時間反転対称性を破った表面状態の存在が示唆された。今後これらの興味深い特徴をより詳細に検討すると同時に磁場印加およびFe蒸着によってマヨラナ準粒子の存在を確立し、さらにそれを自己組織化によって大量に生成することを目指す。
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