研究課題/領域番号 |
22K18969
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
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研究分担者 |
河崎 秀陽 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (90397381)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 走査型イオン伝導顕微鏡 / 高速イメージング / 表面形状計測 / 表面帯電分布 / 動的観察 |
研究実績の概要 |
液中環境での材料や生体細胞膜の表面といった固液界面の活性場において,刻々と変化しながら発現する現象を高分解能で動的観察することはそこで生じる様々な機能や現象の解明に極めて有効である.また,界面上の電荷状態はその発現する現象と直接的に関わっていることから,表面形状のみでなく,その電荷分布の観察手法の開発が望まれている.しかしながら,活性な固体界面の形状や電荷分布のナノスケールでの動的顕微手法はほとんど開発されていない.本研究の目的は液中環境において試料表面の形状と電荷分布をナノスケールの分解能で動的観察可能な高速イメージング法を開発することである.走査型イオン伝導顕微鏡(Scanning Ion Conductance Microscopy: SICM)をベースに2流路を有するナノピペットによる新奇電流検出法により実現する. 2022年度は高速SICMの装置開発について取り組んだ.装置を構築するために,2流路のナノピペットで容量成分のイオン電流を相殺して,信号である抵抗成分のみを検出するためのイオン電流検出回路の設計製作および動作確認を行い.これまでに構築したSICMに実装して動作確認することで開発したイオン電流検出法の有効性を確認できた.また,高速イメージングを可能にするための走査機構としてスキャナーの広帯域化を行った.またプログラムにより走査シーケンスを改良することで高速走査の安定性を向上させた.これらによりSICMイメージングの測定時間短縮を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において,イオン電流検出の応答特性を向上させるための検出回路の開発において,回路シミュレーションとそれに基づいた装置の改善を実現できていることから,順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
現在,装置開発の基本的な要素技術の改良と動作確認がほぼ終わっており,今後,実装,統合して装置を完成させる.その後,テストサンプルを用いて高速イメージングの測定再現性が得られる各種パラメータの最適化や装置の改良を繰り返し,実用性を向上させる.開発したSICM装置を用いてバイオ試料として細胞表面での活性現象の動的観察を行い,本手法の有効性を実証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
装置を開発する上で,当初計画していた装置の部品の流通が滞り,代替品を探す困難があり,時間を要してしまった.装置部位品の納期の関係で,装置構築の完成を次年度としたため,次年度使用額が生じた.なお,研究計画としていた装置の要素技術の開発は既存の装置を活用することで.概ね計画通りできており,次年度に装置を統合することで全体的には計画通り進めることができると判断している.
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