研究課題/領域番号 |
22K18980
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊一 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30162431)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー誘起衝撃波 / 化学結合 |
研究実績の概要 |
本研究は、集光したフェムト秒レーザー光が物質中で短時間に吸収される際に、物質が急激に膨張することによって発生するレーザー誘起衝撃波を利用した新しい化学結合の創成を目指している。これまでは、水素と炭素だけから構成される直鎖状のアルカンを対象にしてきたが、本研究では炭素同士の結合以外の結合を、レーザー誘起衝撃波によって生成し、高速・非平衡条件下での、分子生成機構の探求を進める。本年度は、炭素と酸素との結合が確認されているメタノールへのフェムト秒レーザー照射実験を詳細に行い、メタノール分子同士の機械的な結合によって生成すると予測される全ての分子の生成を、ガスクロマトグラムー質量スペクトル分析によって確認した。さらに、主な生成分子と考えられるメトキシメタノールを蒸留によって濃縮し、その赤外吸収分光を行った。メトキシメタノールの化学的性質はよく知られていないため、濃縮の条件を最適化するには至っていないものの、そのスペクトルは、既に知られている気体状のメトキシメタノールによく類似しており、液体状態での赤外吸収スペクトルの取得に成功した。得られた赤外吸収スペクトルが、メトキシメタノールに近い分子構造を持つメタノールおよびジメチルエーテルのスペクトルとの類似性から、スペクトルに現れる吸収ピークの帰属を検討した。特に分子の指紋領域と呼ばれる波数領域では、C-O-Cの伸縮振動に加え、O-C-Oの伸縮振動に起因すると推定されるピークの存在を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー誘起衝撃波による炭素と酸素の化学結合の生成について、詳しい情報を得ることができた。特に、超高圧状態でメトキシメタノールの生成が確認されたことは、本プロセスの新奇性を裏付ける重要な証左になると考えられる。これらの情報は、今後進める予定である窒素との新しい化学結合の生成に役立つと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
レーザー衝撃波による化学結合の生成において、炭素と酸素に加え、窒素との結合生成に取り組む。これによって、超高圧状態下におけるタンパク質や核酸などの生体関連分子の合成の可能性についての基礎知識を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品が予想以上に寿命が延びたこと、技術的な支援には及ばなかったことから次年度使用額が生じた。翌年度は多くの消耗品の交換が必須であることや、膨大なデータ解析などに技術支援が必要であることから、それらの支弁に充てる予定である。
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