本研究は,自動運転技術や通信技術,生体計測技術など,昨今重要視されている近赤外イメージセンサの分野において,シリコンイメージセンサの近赤外感度を大幅に向上する技術革新をもたらすことに挑戦する研究である.プラズモニクスと呼ばれる光学分野と,イメージセンサの電子工学分野との融合を図ることにより課題解決に取り組む. 特に自動運転技術に用いられる光源波長940nmにおける吸収効率はわずか5%であり,シリコンイメージセンサの近赤外量子効率は極めて低い.本研究期間内の達成目標として,波長940nmにおけるシリコン吸収効率を可視光域と同等の50%以上となるよう劇的な感度向上を目指す.本研究目的が達成されれば,低照度化,低消費電力化,高解像度化,高速化など現行に対して革新的技術をもたらすこととなり,車載センサ市場をはじめとしたセンサ分野への波及効果は計り知れない. 裏面照射型イメージセンサを考慮して解析し,プラズモニック回折によるシリコン層で光を閉じ込めるような機構を新たに考案した.これにより波長940nmにおいて吸収効率53.3%が得られることを解析的に明らかにした.最終年度にはシリコンフォトダイオード上に電子線リソグラフィにより銀回折格子を作製し,銀回折格子のない場合と比較して約1.3倍感度が向上することを実証した.また反射スペクトルおよび分光感度特性を実測し,本研究にて提案する準表面プラズモン共鳴条件にて感度が向上していることを明らかにした.
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