研究課題/領域番号 |
22K19001
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
本田 充紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10435597)
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研究分担者 |
村口 正和 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (90386623)
小田 将人 和歌山大学, システム工学部, 講師 (70452539)
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00585127)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 風化黒雲母 / 熱電変換材料 / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我々が福島第一原子力発電所事故による放射性Cs減容化技術を基軸とした溶融塩技術を駆使することで、土壌粘土鉱物から選択的に様々な材料を調整し、新しい熱電変換材料を創出することです。 本年度は、黒雲母が風化した構造として知られる福島の風化黒雲母と混合塩(NaClやCaCl2など)を加熱処理して得られる粉体材料から焼結体の調整を行い熱電特性を評価しました。具体的には、グラインド機や遊星ボールミル機を用いた粉砕および水ひ作業により風化黒雲母の粒子半径を5マイクロメートル以下とした。その後CsCl水溶液中でCsを風化黒雲母へ吸着させて乾燥させた試料と粉末の塩とを混合し環状型加熱炉により加熱しました。 この結果、風化黒雲母とはことなる構造をもつ複数の結晶が合成されることが示されました。X線回折では風化黒雲母由来の回折ピークが消失し、エネルギー分散型X線分光法による元素マップ解析では、結晶由来特有の元素が高分散している様子が観測されました。これは、比較のために行った塩を添加しないで加熱した結果とは大きく異なる興味深い結果です。 本研究は、風化黒雲母をそのまま加熱するのではなく塩を添加することで種類の異なる複数の結晶をもつ材料創出を実現できたことになります。この材料を焼結し熱電特性を詳細に解析し、これまでにない新しい熱電変換材料としての特性の最適化を行っていく予定です。これらの研究成果については現在特許出願へむけた準備中となっており、次年度早々にも出願へ進める予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、黒雲母が風化した構造として知られる福島の風化黒雲母と混合塩(NaClやCaCl2)を加熱処理して得られる粉体に対する焼結体の形成に成功しました。今後熱電3特性(電気伝導率、ゼーベック係数、熱拡散率)を詳細に解析し、これまでにない新しい熱電変換材料としての特性の最適化を行っていく予定が切り拓かれました。またこれらの研究成果については特許出願準備中となっており、おおむね順調に研究が進展しています。
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今後の研究の推進方策 |
風化黒雲母と塩を混合し加熱処理して得られる材料を焼結し熱電3特性(電気伝導率、ゼーベック係数、熱拡散率)を詳細に解析し、これまでにない新しい熱電変換材料としての特性の最適化を行います。 得られた材料についてはX線回折法により構造を解析し、合わせてエネルギー分散型X線分光法による元素マップ解析により元素分布、X線吸収分光法による局所構造に関する情報を得る予定です。 このようにして得られた結晶構造から第一原理計算チームと連携し、密度汎関数法を用いて電子状態・ゼーベック係数の計算を行う予定です。また混晶比を変えたモデルに対して解析を行い、高い熱電物性を発現する組成比・構造を探索します。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、熱電変換材料の無次元性能ZTを算出するために重要となる熱伝導率をいかに正確に求めるかについて多くの時間を費やしたことから、本年度分研究費の使用計画を変更したため、次年度使用額が生じました。次年度使用額は次年度分研究費と合わせて、熱伝導率を正確に算出するために重要となる比熱について測定が可能な装置の購入に係る費用として、使用予定です。
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