研究実績の概要 |
電場 (E)-分極 (P)曲線にヒステリシスを有する強誘電体は、不揮発メモリやスイッチング素子に必要不可欠な材料である。強誘電体の性能はP-E ヒステリシス曲線における残留分極値 (Pr)と抗電場 (Ec)により決定され、より大きなPrとより小さなEcを持つ材料がデバイスの安定駆動と省エネルギー化に有利である。本提案では、「イオン輸送+アルキルアミド鎖」の分子設計によりイオン伝導性と強誘電性のハイブリッド化を試み、外部電場によりPrが増幅される「イオンブースト型の有機強誘電体の創製」に挑戦した。イオン変位 (輸送)が可能なイオンチャネル構造を有機合成化学の手法から設計する。これを強誘電性の発現が可能なアルキルアミド鎖を導入した分子系に共存させる。テトラデシルアミド置換ジベンゾ18クラウン6エーテルを研究対象とし、分子中心にあるイオンチャネル内にアルカリ金属イオンNa+、 K+、Cs+を導入した。同時に、強誘電性の形成を実現するディスコティックヘキサゴナルカラム液晶性分子である1,3,5トリアルキルアミド置換ベンゼン誘導体(3BC)との混晶液晶を作成した。その際、カウンターアニオンをハロゲン、PF6、BF4、SCNなどに変化させ、最適な液晶混和状態が出現する条件を検討した。結果、IおよびSCN塩が最適である事を見出した。液晶中における3BCのアミド基の回転運動が強誘電性を実現し、18クラウン6エーテル内に導入したイオンの変位が、隣接カラムにおける分極値の総和に摂動を与え、イオン運動を自由度として加味したP-Eヒステリシスの絶対値変化が観測された。
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