研究課題/領域番号 |
22K19006
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石田 尚行 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00232306)
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研究分担者 |
畑中 信一 宇都宮大学, 大学教育推進機構, 特任准教授 (40334578) [辞退]
小林 義男 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30221245)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | スピン転移 / スピンクロスオーバー / 構造相転移 / MOF / ラジカル |
研究実績の概要 |
分子磁性研究者にとって室温で動作する磁石の開発は悲願である。純有機/分子磁石は磁気転移温度が極低温であることが難点(例えば液体He温度以下)であったから、実用温度とするには、パラダイムシフトが必要であった。本課題では構造転移を用いて解決を図る。 配位子の開発においては、SCOに向いた配位子場強度を有する複素芳香族である必要性と、安定ラジカル置換基を導入することの両者を満足するような合成化学を進めた。錯形成は自動集積法によった。磁気測定は本学現有の量子干渉磁束計を用いた。結晶構造解析は二次元検出型迅速X線構造解析装置を用いた。構造物性相関の説明には必要に応じて量子化学計算を取り入れた。研究組織としては、初年度には無機材料化学を専門とする本学の畑中信一助教を研究分担者としていた。2年目には畑中助教が宇都宮大学へ転出されたので、メスバウワー分光を専門とする本学の小林義男教授に分担者に加えた。それぞれ得意な分野で協力していただいた。 成果を箇条書きにすると、(1) 温度ヒステリシスの幅を制御できるSCO、(2) 高温で実現する固相スピン転移:動的共有結合材料、(3) 高温で実現する固相スピン転移:新奇な環状N2O2官能基、(4) ビラジカルの三重項/一重項基底状態のスイッチング、(5) 希土類イオンを有する三次元系電子物性材料の開発、(6) ラジカル置換基を有するSCO配位子の開発。 まとめると、究極目標に置く低温側で磁石でなく高温側で磁石になるという新奇素材については、研究途上にとどまっている。しかしラジカル基を有するSCO配位子のいくつかは完成し、室温程度もしくはそれ以上の温度領域でスピン転移を見せる物質群をいくつか開発した。MOFを目指す方向付けの研究においては、多次元的ネットワークの構築の類例を示すことができた。すなわち、多くの中間目標をクリアすることができた。
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