研究課題
電子状態計算法において、信頼性の高い定量的な計算値を得る事と同時に、その計算精度に応じた解析方法が提供されねばならない。本申請では、自然摂動軌道を利用して、直観性と定量性を両立した分子物性の解析方法、及び、化学反応解析法を構築し、その方法を種々の分子や反応系に応用する。自然摂動軌道は申請者が提案して名付けたものであり、その要点は外場に応答する波動関数の成分を抽出することにある。このため、外場(微小変化)を与える必要がある。純粋な「外場」である外部電場や磁場を使えば、分子分極率やNMR化学シフトなどの各種の解析に使える。更に、本提案では、(a)固有反応座標(IRC)の基準振動に沿った分子骨格の変化、(b)2つの反応物間の相互作用、なども外場として有効である。(b)の場合は、化学反応の特徴を少数の軌道のペアーで直感的かつ定量的に解釈することを目論んでいる。初年度は、NMR化学シフトの解析への応用を進めた。2年目は、電磁気物性とNMR化学シフトを関連させて解析する事を試みた。円偏光発光(CPL)とNMRの両者を発現させる遷移磁気モーメントに注目し、その相関について計算結果にもとずく考察を進めた。先ず、精度検証であるが、NMRの計算精度ついては充分に検討されているので、CPLに関しては、系統的な実験値との比較により、絶対値変化や符号変化がCAM-B3LYP/cc-pvTZレベルで充分に再現できることを確認した。現在、NMRとCPLを合体させた解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
化学反応へのNPOの応用を進める必要があるが、CPLの解析を優先したので、前者については遅れが出た。
電磁気物性とNMR化学シフトを関連させた解析を進める。化学反応に関するNPOの応用について進める。
既に採択されていた科研費(萌芽)がコロナの影響で再延長したので、本科研費と時期が重なってしまい、学会発表などを見送ったりして若干の遅れがでた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件)
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