研究実績の概要 |
昨年度の研究で開発した断熱チャンバーを用いて,空間捕捉した微小液滴に溶存した色素分子の蛍光寿命を測定するための検出系の構築を行った.対物レンズを用いて捕集した蛍光を光電子増倍管で検出し,時間相関単一光子計数法を用いて蛍光減衰曲線を得た.ローダミンBが溶存したグリセリン微小液滴を断熱チャンバー内に設置したイオントラップで空間捕捉し,チャンバー内温度を21.0, 5.0, -1.5, -5.0, -8.0, -10.0 ℃に設定して蛍光寿命の測定を行った.その結果,蛍光寿命はチャンバー内温度が低くなるにつれて遅くなり,チャンバー内温度が-1.5℃以下になるとほぼ一定の値になることが分かった.また,蛍光寿命測定と同時に計測した蛍光スペクトルを解析することによって,寿命測定の間に液滴径がどの程度変化したかを追跡できるように装置を改良した.その結果,チャンバー内温度が-1.0℃よりも低くなると溶媒の蒸発が抑制され,液滴径がほぼ一定に保てることが分かった. 一方,我々が以前に行った実験から,室温で蛍光寿命測定を行っても,顕著なPurcell効果が観測できないことが明らかになっていた.そこで,チャンバー内を冷却して蛍光寿命を測定した結果を解析したところ,低温においても顕著なPurcell効果は観測できなかった.そこで,ローダミンBを表面に吸着させたポリスチレンビーズ(直径は3, 4, 6マイクロメートル)を用いて蛍光寿命の測定を行ったところ,直径3マイクロメートルのポリスチレンビーズの場合,顕著なPurcell効果を観測することに成功した.
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