研究実績の概要 |
高反応性の塩素ラジカルが関与する新たな反応系として、クロロイミンを塩素源および窒素源としたアルケンのアミノクロロ化反応を開発した。フルオレノンから合成したN-クロロフルオレノンイミンは、可視光(青色)を吸収することによって励起すると結合乖離エネルギーの小さいN-Cl結合が均等開裂を起こして塩素ラジカルとイミニルラジカルを生じることを見出した。この2つのラジカルがアルケンに付加することによってアミノクロロ化が進行し、クロロアミンが得られる。この時、求電子性の強い塩素ラジカルが電子豊富なアルケンと先に反応し、安定な内部炭素ラジカルを生じてアミノ化が進む。これまで報告のあるアミノクロロ化反応は、アミノ基を末端炭素に導入する形式がほとんどであり、今回開発した反応はこれと相補的な位置選択性で進行することが特徴的である。本反応の鍵となる可視光によるクロロイミンの直接励起にはフルオレン骨格が重要であることがわかっており、そのほかの三環性骨格や二環性骨格を持ったクロロイミンはほとんど反応性を示さなかった。 前年度にアルキルピリジンのアミノ化反応で端緒をつかんだ塩素ラジカルとホスフィン触媒の相互作用について、単純な炭化水素である2,3-ジメチルブタンのC(sp3)-Hアミノ化反応に利用し、位置選択性に与える影響を調査した。その結果、用いるホスフィン触媒の構造を変化させることによって位置選択性が大きく影響を受けることが確認された。塩素ラジカルとホスフィン触媒の相互作用は、ピリジンのような配位性官能基がない基質にも展開可能であることが示唆される。
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