結合形成過程の理解と立体選択性の発現を目指した検討を進めた。この際、金属ハライドを求電子剤とすると生じる塩が塩基性をもたないために次のシクロペンタジエン誘導体からの脱プロトン化が進行せず、当量以上の外部塩基が必要となるため触媒的なシステムを構築し難い点を考慮し、主に求電子剤として金属アルコキシドや金属アミドを利用する条件について調べた。 i) 環状遷移状態の誘起を念頭にシクロペンタジエンに金属イオンと配位可能な電子求引性基を配向基として導入した配位子ライブラリを構築した。インデニル基にアルコキシカルボニル、ニトロ、シアノ基等を導入したシクロペンタジエン誘導体を合成し金属塩との反応を試みたが、ルイス酸性をもつ金属イオンとヘテロ原子の相互作用が強く、エノラートからシクロペンタジエニル錯体への異性化は観測できなかった。また、同様に電子求引性基をもつピロール・インドール骨格を利用したアザメタロセン合成にも挑戦したが、η5型錯体の形成を確認することはできなかった。 ii)強塩基性条件下で、 アルカリ金属を対イオンとするシクロペンタジエニルイオン誘導体に様々なキラル配位子を組み合わせた反応系を検討したが、触媒的な錯体合成には至らず当量以上の塩基が必要となることが明らかとなった。また、このとき、明確なエナンチオ選択性の発現を観測することもできなかった。 iii) シクロペンタジエニルイオンと直接的な結合をもたないカチオンを用いた、イオン対型中間体を経る反応経路を探索することで直接η5型錯体が生じる可能性を模索したが、単離精製・構造解析が可能な錯体の生成には至らなかった。
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