研究課題/領域番号 |
22K19024
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60401535)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 有機合成化学 |
研究実績の概要 |
オルト位にPPh2やPCy2基を持つアリールボロン酸エステルに対してジメチル亜鉛を加熱条件下作用させると,ホウ素と亜鉛の交換反応が円滑に進行し,用いる亜鉛の当量に関係なくジアリール亜鉛が選択的かつ定量的に生成することを見出した。ジアリール亜鉛の構造はX線結晶構造解析によって明らかとした。本反応は,金属塩の副生を伴わないsalt-free合成法である点,ジアリール亜鉛が選択的に得られる点,低沸点成分を留去するだけでジアリール亜鉛を固体として単離できる点において,亜鉛化合物の新しい効率的合成法として優れている。また,得られたジアリール亜鉛(ビス(o-ホスフィノフェニル)亜鉛)に対してパラジウム(0)やルテニウム(0)を作用させると,亜鉛を配位子としてもつピンサー型PdならびにRu錯体が合成できることを見出した。これらの構造解析の結果,遷移金属から亜鉛に対するドナーアクセプター相互作用が存在することを明らかとし,これまでに例のないルイス塩基によって安定化を受けていない亜鉛配位子をもつ遷移金属錯体の効率的合成法として確立することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜鉛とホウ素の効率的交換反応を開発し,それを利用した亜鉛含有ピンサー型錯体の合成と構造解析に関する論文を発表することができたから。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の結果は,本研究計画の骨子となる「ホウ素/亜鉛交換反応」を確立すると共に,その反応加速の要因について重要な知見を与えるものである。今後は本知見に基づき,適切に設計したジ-,トリ-,テトラボロン酸エステルを用いてホウ素/亜鉛トランスメタル化反応を動的かつ熱力学支配的に行うことで,様々な亜鉛含有巨大三次元構造体(リング,ケージ,ワイヤー,シート)の合成と動的構造変換,ならびに酸化的カップリングによるナノ炭素材料の効率的合成,を達成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初更新を予定していたグローブボックスが,メンテナンスなどによって復調したため購入する必要がなくなったから。これにより生じた残余金は,次年度の反応検討を行うために必要な物品費として使用する。
|