研究課題/領域番号 |
22K19027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大江 浩一 京都大学, 工学研究科, 教授 (90213636)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 酵素応答性分子プローブ / ヘミシアニン / アルデヒド脱水素酵素 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、がん幹細胞の悪性度評価のため、(1) dual応答性分子プローブ用発光団の創成、(2) 高コントラストにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性を可視化するturn-on型発光機構の確立、および (3) ALDHと他の生体内刺激に応答するdual応答機構の確立を目指した。 (1)ジヒドロキシピリジルイソキノリンにそれぞれアセチル基およびピナコラトボリル基を結合させ、カルボキシエステラーゼ(CE)と生体内活性酸素種の1つである過酸化水素に応答するdual応答性分子PiQを合成した。PiQはCEに応答して弱い発光を示した。CEと過酸化水素に応答して異なる波長の発光を示すことから、これら二種類の生体内刺激を定量化できる可能性を示した。 (2)ALDH応答性分子プローブC5S-Aの性能向上に取り組み、側鎖β位にメチル基を導入したβC5S-Aを合成し、1,3-チアジナン環の堅牢性を向上させることにより、ALDH応答前のバックグラウンド発光を低減させることに成功した。 (3)ALDH応答性部位となるω-ホルミルアルキル基およびβ-gal応答性部位となるβ-ガラクトシル基を結合させたdual応答性分子プローブCHO_βgalを合成し、このプローブがALDHおよびβ-galの両方に応答して強い発光を示すことを確認した。膵臓がん細胞SUIT-2にCHO_βgalを作用させたところ一部の細胞のみから強い発光が観測され、これらの細胞が幹細胞性を示すフェノタイプであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度当初に立てた実施計画において、ALDH応答性に加えて、(i) 酸化的な生体内刺激に応答するピナコラトボリル基を導入すること、(ii) β-ガラクトシル基やメトキシメチル基を導入することを挙げ、プローブの生体内刺激応答性を利用してがん幹細胞の悪性度を評価できるdual応答性分子プローブの開発を目指した。「研究実績の概要」(1)に示した通り、ピナコラトボリル基をもつ分子プローブPiQを開発し、そのdual応答性を確認した。また、(3)に示した通り、ALDH応答性に加えてβ-gal応答性を示すdual応答性ヘミシアニン色素CHO_βgalの開発にも成功した。これらに加えて、(2)に示した通り、ALDH応答性分子プローブの高コントラスト化の指針を見出しており、研究は概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
・ピリジルイソキノリン骨格をもつdual応答性分子プローブをがん細胞に作用させ、特異な生体内現象を追跡できることを明らかにする。特に、細胞実験を通してがん幹細胞の悪性度にかかわる要素を明らかにしたい。 ・ALDH応答性とβ-gal応答性を示すdual応答性ヘミシアニン色素CHO_βgalを用いたがん幹細胞の悪性度評価を行うとともに、CHO_βgalを用いるイメージング技術が、生体組織のがん幹細胞の多寡情報検出に有効であることを示す。
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