研究課題/領域番号 |
22K19029
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 直 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70311769)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | アップコンバージョン / エネルギー移動 / トロイダル相互作用 / エキシプレックス / エキシマー |
研究実績の概要 |
主として可視光の利用が期待される長波長低エネルギー光を高エネルギー光に変換するフォトンアップコンバージョン技術において、三重項三重項対消滅を経る機構が最も実用性の高いものと期待されている。この機構では増感剤からのエネルギー伝達、色素間のエネルギー移動と励起色素2分子の衝突、生成する高励起一重項状態からの発光などの多段階プロセスが複雑に関与し、その各プロセスの精密制御が重要である。しかしながら高効率フォトンアップコンバージョンを実現する最適な色素配列の指針はいまだ確立されていない。また、これらのプロセス各々の最適条件についても検討の余地が残されている。 本研究では、ドーナツ状にπ系がつながった、いわゆるトロイダル相互作用を示すことが知られているヘキサアリールベンゼン誘導体を基盤骨格とした実証実験により、そのエネルギー移動効率の最適化により、フォトンアップコンバージョンの高効率化に資する新しい分子設計の設計指針を得ることを目的としている。本年度は引き続き、ヘキサアリールベンゼン誘導体の側鎖アリール基のプロペラ様の動的な構造が様々な物性にどのような影響を与えるかを検討した。検討の結果、動的なプロペラの効果により物性が大きく変化することが明らかとなった。これらを含む一部の成果に関しては、学会発表、論文発表等で公表した。今後、さらに高効率なアップコンバージョンに資する誘導体の合成・検討へと展開する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で重要となるヘキサアリールベンゼン誘導体の合成が進み、計画通り進行している。目的化合物の物性評価も順調であり、特異な物性、応答性についての考察を進めている。一方で、アップコンバージョンに資すると考えられるヘキサアリールベンゼン誘導体については溶解度の問題が課題として残っている。関連のシングレットフィッションを示すヘキサアルケニルベンゼンについての報告などを参考に、新たな誘導体などを検討する必要があると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
フォトンアップコンバージョンに資するヘキサアリールベンゼン誘導体の候補分子として6つのジフェニルアントラセンを骨格に直接導入することを検討したが、段階的にジフェニルアントラセンが導入された複雑な混合物となった。種々の検討の結果、遷移金属を用いる三量化反応を用いた合成法を確立し、質量分析等により目的化合物が主生成物として生じていることを確認したが、難溶性であったため精製が困難という結果となった。今後は溶解度向上のため、末端のベンゼン環等に長鎖アルキル基を導入した誘導体に加え、フラン等の複素環が導入された化合物の合成もあわせ検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度までの計画が予定通り順調に達成され、試薬等の材料費が多少削減されたこと、また別予算の充足により共通して使用する装置等にかかる費用が節約されたため、当初計画を修正し、次年度に使用するより発展的な研究への経費へと振りかえた。具体的には、今後の研究でキラルカラムとクラスター計算機の導入が必要であると判断した。単価の安い実験消耗品を大学の自己経費にて購入することとし、前者については年度末に購入計画に入ったが納品時期として新年度すぐにずれ込んだため今年度支払う。また、後者については比較的高額であるため、次年度予算と合算し購入経費に充てる予定である。
|