研究課題/領域番号 |
22K19030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 亮 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50372561)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 多環芳香族化合物 / 重合反応 / 縫合重合 / アルケン異性化 |
研究実績の概要 |
近年、拡張π電子系に基づく機能性有機材料の開発・利用が盛んに行われており、基盤となる新たな母骨格をもつπ共役有機分子の設計・合成はますます重要となっている。なかでも、多環芳香族化合物は、その中心的な役割を担っているが、逐次的な縮環構造の拡張による従来の合成法では、効率面の問題ばかりでなく、アクセス可能な分子骨格にも大きな制限がある。このような背景のもと、本研究では、新たな縮環型多環芳香族化合物の合成法として、鎖状分子の重合反応による多環芳香族ユニットをもつポリマーの形成とそれに続く鎖切断反応からなる新たなプロセスを提案している。これにより、容易に調製可能な鎖状分子から、従来法ではアクセスできない新規多環芳香族化合物を簡便に合成できるようになると期待される。 本年度の研究においては主に、縫合重合とアルケン異性化による多環芳香族ユニット含有ポリマーの効率的合成法の開発について検討した。 近年我々は、鎖状の非共役モノマーから縮環型π共役構造をもつポリマーの新規合成法として、ロジウム触媒による縫合重合を開発した。これを基盤として、アルキン部位をもつ合成容易な鎖状分子から、従来法では合成困難な多環芳香族ユニットをもつπ共役ポリマーの合成法の開発、および、その汎用性の拡充に取り組んだ。具体的には、1,2-ジアルキニルアレーンをモノマーとした縫合重合とそれに続くアルケンの異性化による四環性の縮環型芳香環を繰返し単位にもつポリ(アリーレンビニレン)の合成について検討を行い、ロジウム触媒を用いた重合条件下において続く異性化まで進行することを見出し、目的とするポリマーの合成法を確立することができた。また、多様な多環芳香族ユニットの合成を目指し、ジインモノマーのリンカーとなるアレーン部位の拡充、ならびに、トリイン・テトラインなどアルキン部位を伸長したモノマーの重合においても成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取り組んだ重合反応の開発が比較的良好に進んだため、概ね順調に研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の進捗を踏まえ、2023年度は、新たな重合反応の開発によって従来法では合成困難な繰返し単位をもつポリマーへのアクセスを可能にするとともに、ポリマー鎖の切断過程の制御法を開拓することで、有用な小分子合成法への展開を目指す。
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