研究課題
挑戦的研究(萌芽)
N-ヘテロ環状カルベン(NHC)が、電気的に中性な炭素種の中で最も電子数の少ない「原子状炭素」の等価体として機能することを実証した。すなわち、α,β-不飽和アミドとN-ヘテロ環状カルベン(NHC)とを反応させたところγ-ラクタムが生成することを発見した。この反応では、NHCの2位の炭素原子が炭素源になっていること標識実験により確認し、導入された炭素のまわりに4つの共有結合を新たに一段階で可能であることを示した。炭素原子を用いる有機合成という新しいアプローチを開拓するものである。
有機合成化学
有機化合物において炭素は要となる元素です。有機化合物中で炭素原子は通常、結合の手を4本持つ状態で存在します。これに対して、炭素原子は、結合の手がなく、わずか4つの価電子しか持たない極めて不安定な化学種であり、それゆえ、化学反応での利用は実用的な観点からは達成されていませんでした。炭素原子が、化学反応に利用することができれば1つの炭素中心に対して4つの化学結合を形成可能であり、これまでにはない新形式の化学反応への応用が期待されます。