本研究は,既存骨格から脱却した独自デザイン分子の創出・合成に特化し,既存の分子では到達不可能な化学現象を追求するものである。ポルフィリンはその剛直環状骨格内部に4座型窒素配位空間を有し,様々な金属カチオンに対して強固な金属錯体形成が可能であることから,広範な生命化学反応の触媒活性部位として利用されるに留まらず,人工の色素材料・発光材料・触媒反応,さらには超分子形成のユニットとしても利用される超機能性一大分子群を形成している。ポルフィリンの構造特性である,剛直環状構造・4つの内向性sp2窒素を踏襲する非平面warped-porphyrinとして,キノリンオリゴマーであるTEtraQuinoline(TEQ),その8水素還元体TEQ-H8,ならびにインドールも利用したLinked uinolino Indole(LQI)を新たにデザインし,合成ならびに機能評価を進めた。TEQの再現性の高い安定供給が可能となる合成法を確立し,各種遷移金属と立体型錯体を形成し,Zn(II)選択的に大幅な蛍光強度増強が起こることを見出した。Fe(II)錯体は各種酸化反応を促進することを突き止め,不斉触媒化の糸口を得た。キノリンの連結様式をhead-to-tail型からhead-to-head型にした亜種の合成にも成功し,X線結晶構造解析から4つの窒素は異なる相対位置を呈することを明らかにした。キノリン2ユニットをインドールとしたLQIの合成法も確立し,2価の金属と中性金属錯体を与えることを確認した。これら4ユニット系マクロサイクロに加え,キノリンユニットを6ユニットに漸増させた新規マクロサイクルの構築の予備的知見が得られつつあり,ユニット連結様式により同分子式ながらハニカム形状・プリズム形状を取ることを見出している。
|