研究課題/領域番号 |
22K19049
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
持田 智行 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30280580)
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研究分担者 |
桑原 大介 電気通信大学, 研究設備センター, 准教授 (50270468)
藤森 裕基 日本大学, 文理学部, 教授 (80297762)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 柔粘性結晶 |
研究実績の概要 |
本課題では、有機金属錯体を用いたイオン性プラスチック結晶(IPC)の物質開拓および機能性実現を目的とする。今年度は第一に、昨年度見出された、IPC相を示すハーフサンドイッチ型ルテニウム錯体の相挙動評価を継続した。固体NMRを適用して室温相での分子運動を検討した結果、この相ではカチオンが一軸回転を起こしていることが判明した。粉末X線回折から、結晶多形の存在が判明し、それらのIPC相への相転移温度が異なることも見出された。第二に、IPC相発現条件の解明を目的として、一連のDMSO配位ハーフサンドイッチ型錯体および対応するサンドイッチ型錯体の結晶構造と相転移挙動を検討した。後者の塩は多くがIPC相を発現したが、前者の塩はIPC相を発現しなかった。これらの比較から、IPC相の発現にはカチオン・アニオンの結晶中での交互配置が必須であることが判明した。また交互配置をとっている場合でも、カチオン周囲の環境の非対称性または分子間の立体障害が大きい場合には分子回転が阻害され、IPC相が発現しなかった。この傾向は、分子の対称性が低いハーフサンドイッチ型錯体は、IPC相を本質的に発現しにくいことを示唆している。一方、IPC相を発現した塩では、カチオン環境の対称性とIPC相への相転移温度の間に相関が見られた。これらの結果はいずれも、今後の有機金属系IPCの設計に非常に有用な知見である。以上の検討に加えて、サンドイッチ型錯体の塩に関しては、IPC相への相転移温度に対するアニオンの影響の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンドイッチ型およびハーフサンドイッチ型錯体の塩において、柔粘性イオン結晶相の評価と、その発現条件の考察が進んだ。これは今後の展開につながる成果であり、進捗状況に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は第一に、IPC相を示すハーフサンドイッチ型ルテニウム含有錯体の相挙動評価を継続する。固体NMRによる分子運動解析を、IPC相を示す塩および示さない塩の両方について行う。第二に、IPC相発現条件の検討の継続として、サンドイッチ型錯体の塩の相転移挙動に対する検討・考察を進める。これらの結果を踏まえ、ハーフサンドイッチ型錯体を用いた機能性柔粘性イオン結晶を開発し、その構造と化学反応を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
詳細な物性測定および物質開発にさらに期間を要するため、その分の費用を次年度に使用することとした。全体の使用計画に大きな変更はない。
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