研究課題/領域番号 |
22K19056
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
杉原 伸治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70377472)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | RAFT重合 / サルファーフリー / 交換連鎖機構 / 可逆的開裂機構 / 連鎖移動剤 / メタルフリー / ハロゲンフリー / ラジカル重合 |
研究実績の概要 |
生体組織は,水環境や疎水環境において特異的な立体構造を有し,緻密な高次構造を形成し機能発現している。このような組織を合成高分子で構築するためには,根本の重合方法を再検討し,一次構造を制御し,集合体レベルで秩序化していく必要がある。これまでに高分子合成の分野では,リビング重合を代表とする精密重合技術が発展し,ある程度構造の明確な高分子を容易に合成できるようになっている。そのため,主として一次構造制御に用いられていたこれら精密重合系も,この10年で集合体制御(高次構造制御)へと有効に使われるように大きく展開している。 これまでに制御ラジカル重合として,ATRP,RAFT,TERPなど様々な方法がすでに提案されており,一次構造制御だけでなく,機能性材料や高次のナノ組織体を合成するために多くの研究者が利用している。また学術的利用だけでなく工業的利用も進んでおり,高分子合成(連鎖重合)法の常識になっている。しかし,昨今の環境への低負荷要求やナノレベルでの高分子(集合体)利用のために,メタルフリー,ハロゲンフリー,サルファーフリーといった重合系が強く求められ,基軸となる重合系を刷新することが,高分子合成に課された喫緊の課題である。昨年度は,新しくサルファーフリーRAFT剤(SF-RAFT剤)の開発を行った。特に,ラジカル重合に限定されず,イオン重合系でも使用可能と予想される共役系化合物に着目したことで,これまでに達成されていないユニバーサルな“サルファーフリー環境低負荷型可逆的連鎖移動重合”の実現の道筋ができた。そこで本年は,そのSF-RAFT剤を用いた重合を光や熱の開始で行い,詳細な動力学的検討を行い,成長反応の制御された重合系を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの計画に基づき,合成した新規SF-RAFT剤を用いた重合を行えたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における新規SF-RAFT剤を用いた制御ラジカル重合では,共役・非共役を問わず,一般的なラジカル重合性モノマーの制御が,RAFT重合と同じ交換連鎖機構機構,すなわち可逆的付加開裂型連鎖移動機構で進行することがわかってきた。しかし,開始反応速度が成長速度に比べて遅いことに起因する分子量分布の増大(分子量分散度Mw/Mn >1.5)とその制御ラジカル重合を用いた高次構造制御への展開までには未だ至っていない。ゆえに,光開始反応を高速化することで,本サステナブル制御重合を一般化することが今後の研究課題である。また本重合法を最適化した上で,種々のブロックコポリマー等シークエンス制御を実現することで,メタル・ハロゲン・サルファーフリーな本制御ラジカル重合法を普遍的な方法へと導き,本研究を推進する。
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