研究課題/領域番号 |
22K19058
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
関 朋宏 静岡大学, 理学部, 講師 (50638187)
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研究分担者 |
佐々木 郁雄 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10771040)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 結晶 / 発光 / 相転移 / クロミズム / 錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、メカノ応答性を示す分子結晶に関し、その応答性のメカニズム解明、微弱な応力に対する応答性の評価、メカノおよび光による段階的応答性の評価、を実現する。最近、一部の分子結晶は温度変化や光照射、機械的応力に対して変形することが報告され、材料の最も普遍的な物性でありながら、その新しい側面が研究されるようになってきた。ごく近年、我々もある金属錯体群が、多様な外部刺激に対して変形を示す分子結晶であることを明らかにしている。本研究では、更に多様な金属錯体や有機分子からなる結晶からも、同様の応答性を導くことを目指し、関連する新機能の開発を目指す。 機械的応力によって、こわれず変形する結晶の開発に成功した。金錯体分子を結晶化し、ピンセットで力を加えることで変形した。このとき屈曲角度がほぼ一定であることから、広く知られている塑性変形では無く、屈曲ドメインにおける結晶相転移が鍵となる結晶であることが示唆された。そこで、屈曲結晶の単結晶XRD線構造解析を行い、変形部位における分子配列変化と、それに伴う双晶化が屈曲の起源であることが明らかとなった。 応力変形と同様に、温度変化に対する結晶変形や屈曲角度の起源も、X線構造解析によって分子レベルの構造変化によって説明できることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成した金錯体の結晶は、機械的応力によって変形する。その際の屈曲角度は、どの部位においてもほぼ一定であり、このような分子結晶は報告例が少ない。広く知られている変形可能な結晶(塑性変形)では応力の強さに比例した様々な屈曲角度を示す事ができる。このような結晶においては、屈曲部位における分子配列は、変化がない,もしくはある特定の規則配列に変化することは無いため、自由変形が可能である。一方、今回合成した屈曲正結晶では、屈曲部位で分子配列変化が起きており、非屈曲部位と異なる配光に変化したことがわかった。特定の変形に限定できる新しい材料として応用が期待されるため、分子構造と変形挙動の相関を更に精査し、今後の分子デザインに役立てる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
金錯体の結晶がシェイプメモリー効果を示す起源を明らかにする。シェイプメモリーを示す事が知られている合金は、形状変形時に金属間の結合は切断しない。そのため、温度変化に対して、原子が元のポジションに戻り形状が回復することがシェイプメモリーの起源とされている。一方、分子結晶の場合、分子間相互作用が共有結合に匹敵するほど強固ではないため、合金とは異なる機構によると示唆される。本研究では、その機構を調査する目的で、金錯体の単結晶-単結晶間相転移と各温度の相の光学特性が互いに異なる点を利用する。つまり、単結晶X線構造解析と各種分光測定により、任意の温度領域においてどのようにパッキング構造が変化したのかを明確課することを目指す。本研究では、単結晶構造を基にしたDFT計算や高速分光法を用いて、金錯体の相転移挙動を詳細に調べる。さらには、現状未知である分子結晶材料のシェイプメモリー機構を明らかにする。また、多様な金属錯体やアクセプター性有機分子を新規に開発し、それらの結晶が金錯体結晶とと同様の刺激応答性・特にメカノ変形特性を示すのかを評価する。また、スクリーニング手法によって結晶機能の改変や機能調整を実現する。 加えて、複素環合成やクリックケミストリーも活用し、新規の金属錯体や発光性有機分子結晶を開発し、刺激応答性の獲得を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用した機器分析の請求が翌年度に行われるので、これに充当する。 年度後期に、精密ピンセットの使用により、結晶片計が容易になることがわかった。DUMOSTARのピンセットは素材によって、堅さや強度が異なるので、購入済みのピンセットで十分に実験をした後、次年度より良い素材のピンセットを購入し実験に臨む。
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