研究課題/領域番号 |
22K19059
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹延 大志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70343035)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | オプト・イオントロニクス / 発光素子 / 受光素子 / 電解質ドーピング |
研究実績の概要 |
本研究は、電解質を用いたキャリアドーピングを基盤とした『オプト・イオントロニクス』の実現を目指す。本研究目的を効果的に達成する上で、最も重要な戦略的要素は以下の4点からなる。 Ⅰ 発光材料を用いた電解質トランジスタの作製:様々な発光材料(有機材料・量子閉じ込め材料(原子層材料)・Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体・Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体)に対する電解質ドーピングの有効性をトランジスタ構造により解明。今年度は、昨年度に引き続き有機材料、原子層材料で大きな成果を得た。特に、有機材料(高分子)においては、電解質トランジスタをゼーベック効果の温度変化と組み合わせることに成功した。 Ⅱ 電解質を用いたPN接合・トンネル接合の実現と受光・発光特性評価:電解質ドーピングによるPN接合・トンネル接合作製を新提案の素子構造で試みる。具体的には、電流電圧特性や発光特性を評価する。今年度は、昨年度に引き続き有機材料、原子層材料で大きな成果を得た。特に、原子層材料を用いて、PN接合を低温において凍結させ、酸化還元反応を大きく超える電圧印加に成功し、大電流密度および励起子の高密度化に成功した。 Ⅲ 微細加工技術を用いたレーザー素子(LD)の挑戦:電解質は高密度ドーピングが可能でありLDに不可欠な大電流の実現に適している。本特徴を最大限に活かすべく、共振器構造と本技術の融合によりLDを作製する。今年度は、SiO2の微小球を用いた共振器に、原子層材料を組み合わせることに成功し、共振発光の観察に成功した。 IV 応用における液体使用に起因する困難・問題点並びに,デバイス動作上の問題等:電解質の使用は、実応用上において極めて重要な動作速度に影響を与える。そこで、パルス電圧による高速動作を原子層材料に対して試み、マイクロ秒での高速動作に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、電解質を用いたキャリアドーピングを基盤とし、材料適合性に優れた極めて挑戦的なオプトエレクトロニクスである『オプト・イオントロニクス』の実現を目指す。具体的には、高密度に電子・正孔を選択的に半導体材料へドープできる電解質を用いたドーピング技術を用い、様々な材料(有機材料・量子閉じ込め材料・Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体・Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体)を用いた受光・発光・レーザー素子の実現に挑戦し、最終的には、オプト・イオントロニクスの技術基盤を構築し、その応用への道筋を拓く。多様な材料群と機能素子を対象とするため、研究期間中に解決する必要が有る研究項目は多岐にわたる。それらを整理すると、以下の4点からなる。Ⅰ 発光材料を用いた電解質トランジスタの作製、Ⅱ 電解質を用いたPN接合・トンネル接合の実現と受光・発光特性評価、Ⅲ 微細加工技術を用いたレーザー素子(LD)の挑戦、IV 応用における液体使用に起因する困難・問題点並びに,デバイス動作上の問題等の解決。 I・IIに関しては様々な原子層物質および有機高分子を用いたトランジスタ・発光素子の高度化に成功した。III・IVに関してはレーザー素子を目指した素子作製と問題解決に取り組み、SiO2の微小球を用いた共振器構造を有する原子層材料発光素子の作製と、低温におけるイオン凍結を利用した大電流注入に世界で初めて成功した。これらの多くは当初の計画を前倒しての達成であり、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、電解質を用いたキャリアドーピングを基盤とし、材料適合性に優れた極めて挑戦的なオプトエレクトロニクスである『オプト・イオントロニクス』の実現を目指す。具体的には、高密度に電子・正孔を選択的に半導体材料へドープできる電解質を用いたドーピング技術を用い、様々な材料(有機材料・量子閉じ込め材料・Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体・Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体)を用いた受光・発光・レーザー素子の実現に挑戦し、最終的には、オプト・イオントロニクスの技術基盤を構築し、その応用への道筋を拓く。本研究目的を効果的に達成する戦略的要素として以下の4項目をあげており、それぞれに対する推進方策を整理する。 Ⅰ 発光材料を用いた電解質トランジスタの作製:最終年度は、大電流密度および共振器構造との組み合わせに成功している有機材料と原子層材料に集中し、更なる高性能化を目指す。 Ⅱ 電解質を用いたPN接合・トンネル接合の実現と受光・発光特性評価:最終年度も引き続き、有機材料、原子層材料を用いた素子作製を行いつつ、レーザー素子作製に重要な基盤技術を構築する。 Ⅲ 微細加工技術を用いたレーザー素子(LD)の挑戦:最終年度も共振器を導入した発光素子を発展させ、レーザー発振を目指す。特に、低温における電解質の固化とパルス電圧組み合わせることにより、これまでの限界突破に挑戦する。 IV 応用における液体使用に起因する困難・問題点並びに,デバイス動作上の問題等:最終年度も、より応用に適した新しい素子構造の提案・実証に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
様々な工夫と改善により、予想以上に既存の装置を用いた高精度な測定が実現したため、計画していた測定装置の購入を次年度へと延長した。これにより、当初の計画を上回る成果につなげられる可能性が出てきた。
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