研究課題/領域番号 |
22K19062
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大北 英生 京都大学, 工学研究科, 教授 (50301239)
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研究分担者 |
KIM HYUNGDO 京都大学, 工学研究科, 助教 (80837899)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 縮環系共役分子 / 蛍光寿命 / 発光量子収率 / 輻射遷移速度 / 無輻射遷移速度 / 再配向エネルギー / エネルギーギャップ則 / 凝集状態 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、バンドギャップエネルギーの異なる種々の縮環系π共役分子の輻射ならびに無輻射遷移速度を蛍光寿命ならびに発光量子収率測定を行うことにより系統的に検討した。まず溶液系について検討したところ、輻射遷移速度はバンドギャップエネルギーによらずほぼ一定の値を示し、モル吸光係数と良い相関を示すことから遷移双極子モーメントに支配されていることが分かった。いずれの分子もほぼ同程度のモル吸光係数を示したことから輻射遷移速度もバンドギャップエネルギーによらずほぼ一定の値を示したと考えられる。一方、無輻射遷移速度はバンドギャップエネルギーに対して一見するとばらついた値であり明瞭な傾向が見られないものの、再配向エネルギーの大きな分子群と小さな分子群に分けて解析すると、それぞれの分子群ごとにエネルギーギャップ則が成立することを明らかにした。興味深いことに、再配向エネルギーの小さな群は大きな群よりも無輻射遷移速度が抑制されており一重項励起子が長寿命であることを見出した。さらに、高分子薄膜に分散することにより分子内回転や振動を抑制した系の構築を試みた。ポリスチレンを媒体して用いると分子分散せずに薄膜中においても凝集構造が見られたが、オレフィン系ポリマーを媒体として用いると低濃度で分子分散した膜が得られることを見出した。濃度を変えて凝集状態を系統的に変えた系に対して同様の測定を行い、凝集状態が輻射ならびに無輻射遷移速度に対してどのような影響を与えるのかについて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、エネルギーギャップの異なる種々の縮環系共役分子に対して輻射ならびに無輻射遷移速度を蛍光寿命ならびに発光量子収率測定により系統的に評価した。その結果、輻射遷移速度はモル吸光係数をよい相関を示し、無輻射遷移速度は再配向エネルギーに応じて異なるエネルギーギャップ則を示すことを見出した。再配向エネルギーが小さな分子群において無輻射遷移速度が抑制され、長寿命励起子状態が実現していることから、再配向エネルギーが支配要因の一つであることを明らかにした。このように、当初計画どおり着実な進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画通りに研究を推進する予定であるが、研究分担者のみならず研究協力者との連携を強化することにより研究の展開を加速する。特に、縮環構造の違いを議論するために新規材料を導入することにより検討できる範囲を拡大することができるので、本研究の展開に資する共同研究の実施については積極的に進めていく。
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