研究課題/領域番号 |
22K19063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生越 友樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | ピラー[n]アレーン / 気-水界面 / 二次元超分子シート / ホスト-ゲスト錯体 |
研究実績の概要 |
表面に疎水性部位を有する二次元超分子シート 片面にフェノール性水酸基、片面に長鎖アルキル基を有する非対称ピラー[n]アレーン(n = 5, 6)を合成した。クロロホルムに溶解させ、気-水界面上で組織化させることにより、親水・疎水面を有するモノレイヤー形成を試みた。その結果、非対称ピラー[5]アレーンを用いた場合は1.00 nm2、ピラー[6]アレーンを用いた場合は1.62 nm2で分子が配向し、モノレイヤーが形成することが分かった。ピラー[5]アレーンの断面積が1.07 nm2、ピラー[6]アレーンの断面積が1.50 nm2であることから、フェノール性水酸基側を下側、長鎖アルキル基を上側に向け気-水界面に対しEdge-on配向を形成していることが明らかとなった。石英基板上に転写させて積層させることも可能であった。積層したフィルムは、基板垂直方向に長鎖アルキル鎖2分子が向かい合った秩序ある構造を有していた。
対称なピラー[n]アレーンを用いた二次元超分子シートの形成 対称なピラー[n]アレーンを用いても、ゲスト分子との錯形成により、親水部と疎水部を併せ持つようになれば二次元シートの形成が可能になると考え、ステアリン酸のようなゲストを添加させ、気-水界面での組織化を試みた。その結果、ステアリン酸を加えることで、対称なピラー[5]アレーンを用いても、二次元超分子シートを形成できることが明らかとなった。ステアリン酸を加えることで、0.92 nm2で分子が配向することが分かった。これより、気-水界面に対しEdge-on配向を形成していること示唆される。さらにMAIRS測定によりEdge-on配向を形成していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
親水・疎水性部位の割合が適切な非対称なピラー[n]アレーンを用いると、当初の想定通り、二次元超分子シートの形成を行うことができた。更には、対称なピラー[n]アレーンにおいても、適切な長さの両親媒性のゲスト分子を添加することで、二次元超分子ナノシートが得られてくることが明らかとなり、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
表面に撥水性を有する二次元超分子シート 片面にフルオロアルキル基、逆面にカチオンを導入したピラー[n]アレーンを合成する。二面性ピラー[n]アレーンを基板表面に集積化させると、逆面のカチオン部位が無機基板上のアニオン部位とイオン間相互作用を形成し、表面に撥水性のフルオロアルキル鎖が高密度で配列でき、超撥水性を示すと期待される。正五角形のピラー[5]アレーンを用いた場合に比べて、六角形のピラー[6]アレーンを用いたほうがヘキサゴナルな安定な構造を形成するために、より安定な二次元超分子シートが得られると期待される。またピラー[n]アレーン間の分子間のベンゼン環相互作用は、ドナー分子同士であるためにフルスタックしにくいと考えられる。これを解消するために、横方向の相互作用を強めることを目的として、電子不足な平面状分子を添加する。これにより、より強固な二次元超分子シートが得られると期待される。
表面に機能性部位、裏面に水素結合、重合基を有する二次元超分子シート 片面に機能性部位、逆面に分子間水素結合が可能なアミド基と重合性基を導入した二面性ピラー[n]アレーンを合成する。疎水性溶媒で二次元超分子シートを形成後、重合し表裏の面を有する共有結合性シートを合成する。機能性官能基部位にフルオロアルキル鎖を導入し、表面のみが超撥水性を示す二面性二次元シートの合成を行う。有機溶媒中では、表面のフッ素面同士を向かい合わせにしたフルオロ層形成による二分子シートの形成が期待される。一方でフッ素溶媒中では、フッ素面を溶媒側に向けた二分子シートの形成が予測される。また、機能性官能基部位として、片面にアゾベンゼンを導入する。アゾベンゼンの光異性化により表面のみで体積変化を引き起こすことから、一方のみにフィルムが折れ曲がる巨視的な変化を示すと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で得られた二次元超分子シートのガス・ゲスト分子蒸気吸着特性を評価するために、次年度の予算と合算してガス・蒸気吸着測定装置を購入する。
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