本研究ではイオン液体を錯体化合物の合成の前駆体として捉え、配位高分子を合成するとともにプロトン伝導性の発現を目指した。前年度よりイオン液体として、カチオンとしてイミダゾリウム系とアンモニウム系、そしてアニオンとしてリン酸系を用い、遷移金属イオンとの反応を進めるとともに、プロトン伝導を用いた機能発現に注力した。Zn2+イオン、リン酸イオン、イミダゾールからなる配位高分子はイオン液体より合成され、高いプロトン伝導性と成形加工性を示す。結晶融解を165℃で示すことから、様々な分子を分解することなくドーピングすることができる。CO2還元触媒としてよく知られる鉄ポルフィリンを上記配位高分子の融液にドーピングし、ガラス化することによって複合ガラス性触媒を調整した。鉄ポルフィリンの触媒サイトの近傍に高いプロトン伝導場を配置することにより、良好なCO2還元触媒として機能し、特に高いCO2選択性を示すことを見出した。また同様のZn2+イオン、リン酸イオン、イミダゾールからなる配位高分子の融液を利用し、光照射に応答するプロトン伝導体の合成を試みた。紫外光の照射によってプロトンの授受が可能であるRu-bpy錯体をドーパントとして用い、ごく少量の当該錯体を配位高分子融液注に分散後、冷却によってガラス複合体を得た。成形加工された膜試料に対して紫外光を様々な出力でオン・オフしたところ、プロトン伝導が高速に変化する挙動を確認した。プロトン伝導度の変化度は従来の高分子系より大幅に高く、イオンスイッチ素子として耐久性高く働くことが示された。
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