研究課題/領域番号 |
22K19065
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉井 康成 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794268)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | アップコンバージョン / 高速分光 / TTA / 励起子 |
研究実績の概要 |
光アップコンバージョン発光(UC発光)は材料に吸収された光子よりも高エネルギーの光子が放出される一見不思議な発光現象である。中でも三重項励起子消滅(TTA)を利用したTTA-UCは太陽光程度の微弱光源でもアップコンバージョン可能なことから、革新的発光デバイスとして大きな注目を集めている。 本研究では高次一重項励起状態からの励起子分裂による三重項励起子生成を利用することで、重金属を用いない、従来とは全く異なる動作メカニズムで駆動する光アップコンバージョン素子の開発に取り組む。 これまでの研究により、有機薄膜太陽電池の電子アクセプター材料として使用されるY6やITICなどの非フラーレン系アクセプター薄膜内において、一重項励起子のSSAにより生じた高次励起状態からの励起子分裂が観測されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Y6の励起状態ダイナミクスについて、過渡吸収分光法を用いた分光計測によって理解が進んでいる。また、Y6のエネルギー準位の測定、およびエネルギーアクセプターの選定も進んでいる。一方、デバイス実装は今後行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
以下3点の実験を行い、本提案手法が固体UC発光の課題解決に向けて有効に働き得るか検討する。 1)SF効率を最大にする製膜条件を探索する。また過渡吸収測定からSFによる三重項生成効率を算出する。 2)アクセプター層の膜厚を種々に変化させてPDIへのエネルギー移動効率を測定し、三重項励起子の拡散長を算出する。得られた知見を基に吸光度とエネルギー移動効率のバランスを最適化できる膜厚を決定する。 3)PDIからのUC発光を観測する。UC発光の量子収率および励起光強度依存性から本アイデアの優位性を確認する。量子収率については特に本ア イデアで利点を求めている外部量子収率が従来研究に比べて向上しているかを検討する。UC発光素子においては光吸収量を増加させると逆エネルギー移動により発光収率が低下するジレンマが存在するが、二層膜とすることでこの点が解決されることが期待される。また二層膜により光吸収量が増加することで最大量子収率を発揮する励起光強度が低下する(励起光強度依存性の測定により評価できる)ことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
UC発光測定用分光器のアップグレードを行った際、半導体不足およびコロナの影響により、予定より日数を要したため、今年度使用する予定であった試薬の一部が不要(次年度繰越)になったため。
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