研究課題/領域番号 |
22K19068
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 佳子 九州大学, 工学研究院, 教授 (00335069)
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研究分担者 |
檜垣 勇次 大分大学, 理工学部, 准教授 (40619649)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ブロック共重合体 / 水溶性高分子 |
研究実績の概要 |
水溶液中の分子集合体は、分散剤、食品工学、創薬など多くの応用があり、高分子機能材料の開発の上で重要である。水溶液中の分子集合体の多くは疎水性と親水性を有する両親媒性分子であるが、生物界では、水溶性高分子でも分子間相互作用や物理化学的な作用によって分子集合体を形成する事例がある。 糖を側鎖に有する糖鎖高分子は、親水性の糖鎖を高分子側鎖に有する高分子である。各種の糖を結合させた、メタクリレート誘導体の合成を行い、RAFT剤を用いた重合によって高分子を調製した。PEGを末端に有するRAFT剤を用いることで、PEG-糖鎖高分子の水溶性ブロック高分子についても合成した。 先ず、糖鎖高分子の分子集合能について、DLSを中心とした検討を行った。DLSによる検討では、以前の本グループの研究で、マンノースを側鎖に有する糖鎖高分子の低温での分子集合体形成を見出している。しかしながら、DLSレベルの大きさの分子集合体形成は確認されなかった。X線小角散乱(SAXS)では分子集合体の形成が観測され、小分子集合体が形成されることがわかった。 また、マンノースを側鎖に有する糖鎖高分子について、RAFT重合によって調製した後に分子末端を分解してチオール化することで、金基板上に結合させて、糖鎖高分子を固定化した分子間相互作用を計測した。その結果、カルシウム依存的な強い相互作用が観測された。他の糖鎖間では強い相互作用は観測されないことがわかった。一方で、糖鎖高分子の分子集合体形成について、糖鎖高分子とフェニルボロン酸ポリマーの複合体形成を検討した。糖鎖高分子とフェニルボロン酸の分子集合体形成については、pH依存性があるが、集合体形成が確認された。水溶性のブロック高分子として、ベタイン型の高分子、糖鎖高分子、PEGまたはPEGメタクリレートエステルについて検討し、それらのブロック高分子について合成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以前の本グループの研究で、マンノースを側鎖に有する糖鎖高分子の低温での分子集合体形成を見出している(Langmuir, 2018, 34(29), 8591)。しかしながら、DLSレベルの大きさの分子集合体形成は確認されなかった。そのため、予定していた一部の研究ができなかった。より微視的な観点から糖鎖高分子の分子集合体形成や、相互作用を測定したところ、過去研究に報告した通りの強い相互作用を確認している。分子集合体、コアセルベートの調製条件については再度検討する必要があるが、微視的なナノレベルでの分子集合体形成について検討することで、検討を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、微視的な観点から水溶性高分子が水溶液中で分子集合体を形成することについて明らかにする。水溶液中における糖鎖高分子の分子集合特性について、定量的な強さ、添加イオン依存性などについて特に明らかにする。マンノース高分子の分子集合体形成が確認されているが、詳細な分子間相互作用が不明であることからそのことを踏まえて、分子集合特性を明らかにする。 また、糖鎖高分子と結合を作るフェニルボロン酸ポリマーとの複合化による分子集合体形成を検討する。糖鎖依存的な分子集合体形成を達成して、環境依存的な分子集合体形成から糖依存的なDDSに繋がる分子システムの創製を目指した研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度には分子集合体形成について研究が進まない点があり、やや残額が生じた。研究後半から、分子集合体の形成原理に焦点を当てるように研究方向性が定まったが、やや残額が生じている。
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