研究課題/領域番号 |
22K19071
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
緒明 佑哉 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90548405)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 導電性高分子 / 共役高分子 / 樹脂 / ゴム / 自由体積 |
研究実績の概要 |
本研究は、樹脂やゴムなどの汎用的な高分子材料中の「自由体積空間」で共役高分子を気相経由で重合する新手法を確立することを目指している。本手法により、共役高分子を汎用的な高分子材料中に分子鎖レベルでその場・気相重合することが可能となり、均一な複合による機械的強度、気体透過性、導電性等の制御や向上により、新規な高分子材料の機能化を実現する。2023年度は、まず、いくつかの汎用樹脂およびゴム材料中に導電性高分子を合成する手法の開拓と条件の最適化を行った。導入モノマーの量や反応条件、原料の反応順、実験系のセットアップなどを確立した。同最適化した条件で、いくつかの樹脂やゴムに複合を試みたところ、実際に樹脂内部まで複合した場合と表面のみにコーティングが生成する場合があることがわかった。前者のサンプルについて、顕微鏡観察、組成分析などを複合的に行うことで、表面へのコーティングではなく、自由体積空間に複合している可能性を示した。また、陽電子消滅寿命測定法により、樹脂やゴム中の自由体積空間の体積および孔径が減少していることがわかった。比較として、様々な種類のモノマーでの複合化を試み、モノマーの種類による複合可否を調査した。いくつかの典型的な共役高分子の合成法による複合化を試みたところ、自由体積空間での共役高分子の形成は見られなかった。以上の結果より、本研究で確立した手法のみで、分子鎖間の自由体積空間というせまい空間での重合が可能であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の当初計画として、提案者らが予備的に発見した気相重合の制御と追究により、【課題1】自由体積空間での新しい共役高分子材料の気相重合法の確立、【課題2】反応・複合化メカニズムの理解と制御、【課題3】共役高分子複合型材料の機能開拓、を設定した。実際に、2022年度は予定していた【課題1】に加え、【課題2】も進めることができた点で、予想以上に進んでいると評価した。2023年度より【課題3】へ移行することができ、機能開拓を進めることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度で【課題1・2】として合成手法の確立と構造の評価が完了しつつある。そこで、本研究の今後の計画は、【課題2】の未解決部分として、自由体積空間での経時的な高分子の形成メカニズムの評価やどのような樹脂と共役高分子で複合が可能なのかの調査を行う。これにより、本現象の理解を深めることで手法の深化を目指す。さらに、【課題3】として、得られた共役高分子を複合した汎用樹脂およびゴム材料の応用と機能開拓を進める。主に、導電性や機械的強度に着目した機能開拓を試みる。
|