研究実績の概要 |
昨年度は、RuO2/MO2(M=Ir, Sn)/TiO2(110)単結晶ヘテロ構造を作製し、その酸素発生触媒特性を評価し、MO2中間層の存在がRuO2触媒の異方歪みおよび触媒活性におよぼす影響を議論した。その後、論文にまとめ、ACS Catalysis誌に掲載された(ACS Catalysis, 13, 2023, 11433-11440)。本成果はRuO2/TiO2触媒について中間層を用いて触媒機能を向上することに成功し、異方歪みの役割について明らかにした世界初のものである。 既に当初計画の目的をほぼ達成しているため、本年度はRuO2触媒中の異方歪みを制御する手法として異種元素ドーピングを検討した。異種元素としてTiを選択し、アークプラズマ蒸着法を用いTiドープRuO2単結晶薄膜を作製した。構造評価には走査型透過電子顕微鏡(STEM)、in-planeX線回折、原子間力顕微鏡、X線光電子分光法を用いた。触媒活性は窒素パージした過塩素酸溶液中で分極曲線を測定し評価した。触媒耐久性は定電流密度でのクロノポテンショメトリーにより評価した。作製した薄膜の断面STEM観察を行なったところ、ドープ元素であるTiが単結晶薄膜内に均一に固溶されていることが確認され、目的とする異種元素ドープ単結晶薄膜を得ることに成功した。また、Ti量が増加するほどRuO2単結晶薄膜内の異方歪み量が増加しており、異種元元素ドーピングにより異方歪みを制御することができた。更に、異種元素ドーピングによりRuO2薄膜のOER活性、安定性が飛躍的に向上し、異方歪み量と触媒特性との相関性が示唆された。
|