研究課題/領域番号 |
22K19092
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大久保 將史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20453673)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 電池 / 固体電池 / 層状化合物 / MXene |
研究実績の概要 |
本研究は、持続可能社会を構築するためのキーデバイスである全固体電池の実現を目指し、長寿命化の妨げとなる、イオン挿入脱離に伴う膨張収縮を起こさない‘無歪’電極材料を開拓する。具体的には、遷移金属炭化物ナノシートMXene(マキシン)を対象物質とする。2022年度においては、Ti3C2Txの組成を持つMXeneを電極活物質とした全固体電池を作製し、その特性評価を行った。固体電解質としては良質な電極-固体電解質界面を形成することが容易な硫化物固体電解質を使用した。その結果、作製された全固体電池は安定な充放電サイクルを示すことが分かった。この安定な充放電サイクルはMXeneの充放電に伴う体積変化が少ないこと、すなわち、電極-固体電解質界面を良好な状態で保持できることが原因であると予想された。しかし、高レートにおいては顕著な容量劣化も確認され、セル中の抵抗を低減する必要があることが分かった。また、LiCoO2を正極とするフルセルの試作も行い、100サイクル程度の安定な充放電が可能であることを見出した。しかし、高レートにおいては容量の低下は顕著であり、やはりMXene電極の出力特性を改善する必要があることが確認された。従って、2023年度以降は、高抵抗の原因を解明し、その改善を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MXene電極を用いた全固体電池を作製し、その安定な充放電サイクルを確認した。また、高レートにおいての容量低下も見出し、性能の律速段階も明らかにすることに成功した。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究により、Ti3C2Txを電極活物質として用いた全固体電池は高レートで容量低下を示すことが分かった。このセル内抵抗の原因を解明するためには、インピーダンスによる抵抗成分の解析、その結果に基づく抵抗成分の低減が必要である。例えば、固体電解質の伝導度が主要な抵抗成分であった場合、高い伝導度も持つ固体電解質でのセル作製を行う。電極-固体電解質界面における電荷移動が主要な抵抗成分であった場合は、良好な界面構造を維持するために、MXeneの表面上を制御したり、セルの作製プロセスを改善する。以上の研究項目を実施することで、MXene電極を用いた全固体電池の性能改善を図る。
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