研究課題/領域番号 |
22K19094
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松崎 功佑 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40571500)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 正孔輸送材料 / ドーピング |
研究実績の概要 |
太陽電池に用いられている正孔輸送材料には高性能なp型半導体が必要であり、近年、その候補としてCu(I)半導体材料が検討されてきた。その中より化学的に安定かつ溶液法で比較的容易に薄膜形成が可能なワイドギャップp型無機半導体のヨウ化銅(CuI)に着目した。 正孔輸送能を向上させるために、正孔濃度を向上させるキャリアドーピング法を検討した。銅一価で構成されるCuIでは、置換をゼロ価不純物で行う必要があり、カチオン不純物を用いたCuIの正孔ドーピングはこれまでなかった。 キャリア濃度が純粋なもので10^14cm-3程度と低かったのに対して、等原子価のアルカリ不純物を入れると増加することが分かった。また、アルカリ金属不純物の最適化を行い、カリウム、ルビジウム、セシウムの中でセシウムが最も効率のよいドーパントとなることが分かった。セシウム不純物濃度を制御することにより、キャリア濃度は最大で10^18 cm-3以上であった。また溶液法で作製した多結晶薄膜でもキャリア濃度は増加し、最大で~1x1019cm^-3まで向上した。元素分析よりセシウム導入により銅欠損となることが明らかになり、複数の欠陥種によってキャリア濃度増加が示唆された。そこでその欠陥構造解析を行ったところ、格子間セシウム、複数の銅空孔とヨウ素空孔からなる複合欠陥が安定で、浅いアクセプター準位を形成することが分かった。これにより、高抵抗のヨウ化銅半導体に銅と同じ価数をもつセシウムを加える簡便な方法でキャリア濃度制御が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワイドギャップp型無機半導体のヨウ化銅のキャリア濃度制御が可能となり、また溶液法で容易に導電性の高いヨウ化銅薄膜が作製可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
ヨウ化銅のドーピング技術を用いて、太陽電池の正孔輸送層として性能が向上するか調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国外での成果発表はコロナ禍の影響で取りやめたため、その旅費相当分は翌年度分に繰り越し、国外での成果発表を行う予定である。
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