研究課題/領域番号 |
22K19104
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 浩之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30274434)
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研究分担者 |
岡田 智 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70785229)
三浦 一輝 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70825330)
盛田 大輝 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80881929)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質間相互作用 / α-ヘリックス / SARS-Cov-2 / 3次元骨格分子 |
研究実績の概要 |
多くのタンパク質間相互作用(PPI)界面を形成する部分立体構造に着眼し、そのヘリックスを模倣する籠型3D骨格低分子の創出する。SARS-Cov-2ウイルスの感染に重要なスパイクタンパク質表面のRBDとヒト細胞表面のACE2受容体のPPIに着目し、これを阻害する低分子を見出すことが本研究の目的である。2022年度は、最近報告された、SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質表面の RBD に結合するヘリックスペプチド断片情報をもとに、RBDと相互作用 していると考えられるアミノ酸残基をアラニン置換したペプチドを合成し、ACE2受容体のα-ヘリックスペプチドの「Hotspot」を検出した。そして、このHotspotのアミノ酸残基から離れたアミノ酸残基に、蛍光色素の導入を検討した。4種類の蛍光色素導入ペプチドを合成し、二次構造変化を、円偏光二色性(CD)測定することにより検証した。 次に、Delta変異株(B.1.617.2)と Omicron変異株(BA.5)のRBDを用いて、RBD滴定アッセイを実施した。Delta変異株およびOmicron変異株のEC50はそれぞれ5.2 nMおよび2.2 nMであり、Wuhan-H-1株のRBDと同様に、相互作用することが示唆された。このアッセイ系を用いて、天然物glycyrrhizinがSARS-Cov-2ウイルスの感染に重要なスパイクタンパク質表面のRBDとヒト細胞表面のACE2受容体のPPIを阻害することを初めて実証した。 同時に、PPIを標的とした3次元骨格分子骨格の構築を検討し、複雑な三次元足場に基づくペプチドミメティクス設計のための分子発生器、「DeepCubist」をドイツ・ボン大学のBajorath教授と共同開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、PPI阻害剤のアッセイ系を構築することを達成しただけでなく、このアッセイ系を用いることで、天然物glycyrrhizinがSARS-Cov-2ウイルスの感染に重要なスパイクタンパク質表面のRBDとヒト細胞表面のACE2受容体のPPIを阻害することを初めて実証できた。さらに、同時に、PPIを標的とした3次元骨格分子骨格の構築を検討し、複雑な三次元足場に基づくペプチドミメティクス設計のための分子発生器、「DeepCubist」をドイツ・ボン大学のBajorath教授と共同開発に成功したことから、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者が開発した独自の籠型3D骨格に対し、3つの側鎖Pythonスクリプトを作成し、申請者が独自に作成した側鎖ライブラリー(500種)を用いて、 2千万化合物のバーチャルライブラリーを構築する。そして、初年度に明らかにしたRBD結合ペプチドの「Hotspot」の構造をもとに、ファーマコフォアモデルを作成し、in silico スクリーニングを本学スーパーコンピューター TSUBAME に搭載されている「Glide」 を用いて行う。得られた Top1000化合物に対し、合成可能な 20 化合物を選択して合成し、PPI阻害剤アッセイ系により評価することで、ウイルス感染阻害剤を見出す予定である。
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