研究課題/領域番号 |
22K19107
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
樫田 啓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30452189)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 蛍光バーコード / 抗体 / インタラクトーム / セリノール核酸 |
研究実績の概要 |
これまでに人工核酸の鎖交換反応を利用することで、蛍光色が”配列”に従って変化する蛍光バーコードの開発に成功している。本研究では、これを更に発展させることで生体分子間相互作用を可視化することを目指す。具体的には1)蛍光バーコードの拡張、及び2)それを利用した生体分子間相互作用解析について検討を行う予定である。 本年度は1)の蛍光バーコードの拡張において重要となる人工核酸の鎖交換反応の速度論について重点的に解析を行った。具体的には我々が開発した人工核酸であるトレオニノール核酸(aTNA)及びセリノール核酸(SNA)のtoehold長を変化させ、系統的に鎖交換反応の速度を解析した。また、同様の配列をもつDNAとの比較を行った。その結果、人工核酸の鎖交換反応速度もDNA同様のtoehold長依存性を示すものの、低温においてはDNAと比較して反応が若干遅いことがわかった。これは人工核酸が高い二重鎖安定性を示すことに起因すると考えられる。一方、より高温条件下で同様の測定を行ったところ、人工核酸特にaTNAの鎖交換反応が大幅に高速化することが明らかとなった。このことは、aTNAを利用することで温度駆動型の論理回路を開発できることを示唆している。また、蛍光バーコードの蛍光色変化を高速化するためには室温より高温の温度が望ましいことがわかった。更に、aTNAのキラリティに応じて鎖交換反応の直交性を示すことが明らかとなった。 これらの成果は現在論文投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では2年間の研究期間において、1)蛍光バーコードの拡張、及び2)それを利用した生体分子間相互作用解析について検討を行う予定である。 本年度は1)蛍光バーコードの拡張において重要となる人工核酸の鎖交換反応の速度論的解析について主に検討した。その結果、人工核酸の鎖交換反応速度が温度に大きく依存することを明らかにした。これは蛍光バーコードを拡張する際の最適温度を探索する上で重要な知見である。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間最終年度となる次年度は人工核酸の鎖交換回数を増大させることで、蛍光バーコードの更なる拡張を目指す。その際、今年度明らかにした人工核酸の鎖交換反応速度を利用することで、蛍光バーコードの駆動速度を最適化したい。また、蛍光バーコードを抗体に固定化することによる、生体分子間相互作用解析について検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では人工核酸の鎖交換反応解析において多数の人工核酸配列を合成する予定であった。しかしながら、当初設計した配列がうまく機能したため、当初の予定より人工核酸合成費用を抑えることが出来た。 次年度は人工核酸を抗体に結合させ生体分子間相互作用解析を目指す。抗体などの生化学試薬は高価であるため、前年度以上の消耗品費を使用する予定である。
|