研究課題
昨年度は、蛍光プローブ標識合成糖鎖を導入したHaloTagリガンド(7糖、9糖、12糖)を結合させた膜タンパク質がガレクチン-3(Gal-3)の存在下で、側方拡散および内在化にある程度の差が生じることを実証した。本年度はこの解析手法を細胞外小胞(EV)に応用する研究を実施した。細胞膜上の標的タンパク質を化学合成した糖鎖で標識し、Gal-3添加条件下でEVを回収後、糖鎖が修飾されたタンパク質のEV膜発現量を評価した。化学合成した糖鎖の修飾には、昨年度と同様にHaloTagタンパク質とハロアルカンの速やかな共有結合形成を利用した。まず、HaloTag融合脂質係留型タンパク質(GPI-HT)をHEK293T細胞に安定に発現させた細胞株:HEK293T GPI-HTを構築し、この細胞の上清から超遠心法にてEVを回収し、EV膜上にGPI-HTが発現していることをWestern blottingによって確認した。続いて、HEK293T GPI-HT細胞にGlcNAc末端糖鎖(Gal-3非結合糖鎖)もしくはGalactose末端糖鎖(Gal-3結合糖鎖)を導入し、Gal-3を添加して3日間培養した後、上清からEVを回収し、EV膜上のGPI-HT発現量を評価した。その結果、Galactose末端糖鎖を導入したGPI-HTのみ、Gal-3の添加によってEV膜上での発現量が増加した。Gal-3の濃度上昇により、発現量はさらに増加した。よって、糖鎖―Gal-3相互作用はタンパク質のEV膜への輸送を促進することが分かった。本研究は論文として投稿し、現在査読中である。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 62 ページ: e202304779
10.1002/anie.202304779
巻: 62 ページ: e202303750
10.1002/anie.202303750