研究課題
我々は2022年に、既知のPROTACと標的タンパク質およびE3リガーゼとの三者複合体構造を基盤として、PROTACに新たな機能を追加できる三価PROTAC テンプレートを報告した。標的タンパク質:PROTAC:E3リガーゼ複合体内における配向性を規定しながら官能基またはプローブを導入できるという特徴を活かして、(1)蛍光色素、(2)近接駆動型標識能を持つ発蛍光基(NBD基)、(3)ビオチン、(4)紫外線照射下で酸性アミノ酸残基と共有結合を形成する光アフィニティーラベル基(ACT基)、を三価PROTAC テンプレートに導入し、得られたPROTACプローブ群を用いてPROTACの細胞内挙動やPROTAC特有のタンパク質分解誘導に係る新規因子・機構を探索・解析する研究を実施した。最終年度には4種の三価PROTAC テンプレートに各種蛍光色素、NBD基、ACT基、ビオチンを導入した約20種類の誘導体を合成した。研究期間全体を通じて約40種類の誘導体・プローブを合成した。これらの標的タンパク質分解誘導能を確認したところ、導入する官能基やその性質によってタンパク質分解誘導活性の大きな低下が見られる例があったことから、改めてこれらの化合物の溶解性や細胞膜透過性、および三者複合体形成能を評価・解析した。この結果から、タンパク質分解誘導活性の低下を避けながら誘導体化・プローブ化するための指針が改めて得られた。また、合成した蛍光標識化プローブを培養がん細胞に添加し、細胞内動態を観察したところ、細胞内の特定の領域へのプローブの集積が見られた。この結果はPROTAC自体の細胞内動態を観察した数少ない例である。その他、本研究期間中に解析は完了しなかったが、有用なPROTACプローブが取得できたため、PROTAC特有のタンパク質分解誘導に係る新規因子・機構の探索・解析を引き続き進める予定である。
すべて 2024 2023
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)