• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

細菌の細胞外遺伝情報記憶システムの実体に迫る

研究課題

研究課題/領域番号 22K19124
研究機関東北大学

研究代表者

永田 裕二  東北大学, 生命科学研究科, 教授 (30237531)

研究分担者 大坪 嘉行  東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (40342761)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード細菌進化 / ゲノム / 未開拓遺伝子資源 / 膜小胞 / 挿入配列 / 可動性遺伝因子
研究実績の概要

人工の殺虫剤で環境が汚染されると、環境常在細菌が、特殊性の高い分解酵素遺伝子を細胞外から獲得することで分解細菌が「誕生」する。しかし、それら遺伝子の直接の進化的起源が推測できる配列は膨大な量のゲノム・メタゲノム情報にも見出されない。すなわち、細菌は現在のメタゲノム解析技術では検出不可能な未知の「細胞外遺伝情報記憶システム (Extracellular Genetic Information Storage Device: EGISD)」から必要に応じて適当な遺伝子を獲得し、利用する術を有していると考えられる。本研究では、この細菌の「EGISDを利用する機能」を用いて、「EGISDの実体」と「それを利用する機構」を解明することを目的とする。研究成果は、微生物の未開拓な潜在能力の効率的利用手法への展開が期 待できる。
初年度は、殺虫剤gamma-HCH (HCH) の資化能力を有する天然の分解細菌ゲノムに散在する分解遺伝子群をクラスター化して類縁株に導入することで作製した人工のHCH分解細菌を元に作製したキャプチャリング株が、当該遺伝子の導入で実際に資化能を回復することを確認した。一方、EGISDの候補である膜小胞 (MV) をHCH分解細菌が産出すること、およびHCH資化に必須なABCトランスポーター遺伝子破壊株が野生株より多量のMVを放出することを確認し、MVに含まれるDNAの塩基配列決定を試みた。MVに含まれるDNA量が少なく、十分量のリードを得ることができなかったが、可動性遺伝因子関連のDNA領域が他の領域に比べて高比率で存在することを示唆する結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

相補株の取得には至らなかったが、コントロール実験でキャプチャリング株の有効性を示すことができた。また、MVに含まれるDNAの塩基配列を決定する方策を確立することができた。

今後の研究の推進方策

(1) 天然のHCH分解細菌から作製したキャプチャリング株に加えて、人工のHCH分解細菌を元に作製したキャプチャリング株を利用して、様々な遺伝子資源からHCH分解遺伝子の取得を試みる。相補株が得られた場合には、全ゲノム配列を決定し、どのような機構で遺伝子が導入されたか解明する。
(2) HCH分解細菌からMVを大量に精製し、ゲノムアンプリファイなども利用して、MV画分に含まれるDNAの塩基配列を決定する。十分なリードが得られた場合には、MV画分に含まれるDNAの特徴を明らかにする。また、HCH分解細菌由来のMVをキャプチャリング株と混合し、相補株が得られるか検討する。
(3) 細胞外DNAの取り込みに関与することが示唆されている挿入配列IS6100の機能について、(i) キャプチャリング株のIS6100の保持の有無が外部からの遺伝子獲得効率に影響するか検討する。また、精製したIS6100転移酵素を用いて、(ii) IS6100転移酵素の有無が遺伝子獲得効率に影響するか、(iii) 各種試料と混合した際にどのような配列のDNAと優先的に結合するか、検討する。

次年度使用額が生じた理由

MV画分に含まれるDNA量が予想外に少なく、MV由来DNAを精製・解析する系の確立に時間を要した。初年度に確立した方法で、次年度ではNGSによる塩基配列解析が必要となる。また、初年度は相補株が得られなかったため、相補株の全ゲノム解析の費用も次年度に持ち越した。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Reconstruction of a Soil Microbial Network Induced by Stress Temperature2022

    • 著者名/発表者名
      Yang Dailin、Kato Hiromi、Kawatsu Kazutaka、Osada Yutaka、Azuma Toyohiro、Nagata Yuji、Kondoh Michio
    • 雑誌名

      Microbiology Spectrum

      巻: 10 ページ: e02748-22

    • DOI

      10.1128/spectrum.02748-22

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 従属栄養細菌の極貧栄養環境でのCO<sub>2</sub>依存的な増殖現象2022

    • 著者名/発表者名
      永田 裕二、加藤 広海、大坪 嘉行
    • 雑誌名

      環境バイオテクノロジー学会誌

      巻: 22 ページ: 9~13

    • DOI

      10.50963/jenvbio.22.1_9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 土壌細菌の進化と種間相互作用2023

    • 著者名/発表者名
      永田裕二
    • 学会等名
      第34回加藤記念研究助成贈呈式特別講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 土壌圏微生物による人工農薬分解のフロンティア2023

    • 著者名/発表者名
      永田裕二
    • 学会等名
      日本農薬学会第48回大会 未来開拓シンポジウム「将来の植物保護に向けた応用微生物学」
    • 招待講演
  • [学会発表] Uncovering the Dynamics of Microbial Genomic Structure and Function in Relation to Carbon Source Variation: An Investigation of Taxonomic Succession and Metagenome Composition2023

    • 著者名/発表者名
      Leonardo Stari, Hiromi Kato, Yoshiyuki Ohtsubo, Yuji Nagata
    • 学会等名
      第17回日本ゲノム微生物学会年会
  • [学会発表] 土壌の違いが細菌叢形成に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      平野 翔子、加藤 広海、Leonardo Stari、大坪 嘉行、永田 裕二
    • 学会等名
      第17回日本ゲノム微生物学会年会
  • [学会発表] 細菌由来のデハロゲナーゼを発現するシロイヌナズナ植 物の人工農薬分解活性2023

    • 著者名/発表者名
      鄧 文昊、高田 美信、大坪 嘉行、渡辺 正夫、永田 裕二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] The succession of taxonomic structure and metagenome composition of bacterial community cultured with different carbon sources2023

    • 著者名/発表者名
      Leonardo Stari、Hiromi Kato、Yoshiyuki Ohtsubo、 Yuji Nagata
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 従属栄養細菌の超低栄養環境での増殖を引き起こすAdhXは promiscuousなアルコール脱水酵素である2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤 蓮、永田 裕二、大坪 嘉行
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 混合無菌土壌に移植した土壌細菌集団の菌叢形成2023

    • 著者名/発表者名
      平野 翔子、加藤 広海、大坪 嘉行、永田 裕二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] PCB分解細菌の可動性遺伝因子ICEKKS102Tn4677 の oriT における TraR標的の探索2023

    • 著者名/発表者名
      松本 哲、永田 裕二、大坪 嘉行
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 土壌細菌の機能と進化2023

    • 著者名/発表者名
      永田裕二、Stari Leonardo、加藤広海、大坪嘉行
    • 学会等名
      第70回日本生態学会大会シンポジウム「土壌圏の複雑性と適応性を明らかにする総合科学」
  • [学会発表] 異なる無菌土壌への細菌集団移植時の菌叢形成2022

    • 著者名/発表者名
      平野 翔子, 加藤 広海, 大坪 嘉行,永田 裕二
    • 学会等名
      微生物生態学会35回大会
  • [学会発表] Cupriavidus株が長期持続的g-HCH分解細菌集団形成の鍵である2022

    • 著者名/発表者名
      佐子川さやか、加藤広海、大坪嘉行、永田裕二
    • 学会等名
      環境バイオテクノロジー学会2022年度大会
  • [学会発表] Community succession of a soil bacterial population cultured with different carbon sources2022

    • 著者名/発表者名
      Stari Lazo Leonardo Alfredo, Hiromi Kato, Yoshiyuki Ohtsubo, Yuji Nagata
    • 学会等名
      環境バイオテクノロジー学会2022年度大会
  • [学会発表] 土壌細菌機能発現を支える種間相互作用2022

    • 著者名/発表者名
      永田裕二
    • 学会等名
      大隅基礎科学創成財団微生物コンソーシアム定例会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi