研究課題/領域番号 |
22K19126
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田村 憲司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70211373)
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研究分担者 |
中塚 博子 東京農業大学, 農学部, 助教 (80826769)
長尾 眞希 (浅野眞希) 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80453538)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 炭素循環農法 / バガス廃菌床 / 土壌 / 土壌の化学性 / 土壌酵素活性 / 土壌有機炭素量 |
研究実績の概要 |
バガス廃菌床の施用により化学肥料区と比較して土壌pHは高くなり、サトウキビ収量、土壌のTN、OC、可給態窒素量、酵素活性、FDA加水分解活性が増加した。pHは3ヶ月後の化学肥料区とバガス廃菌床300 g施用区では約0.9バガス廃菌床施用区の方で高くなっていた。化学肥料区とバガス施用区では3か月の間に約0.3高くなったが、バガス廃菌床施用区では約0.6高くなっており、廃菌床特有の効果によるものと考えた。 サトウキビの収量はバガス施用区で低くなっており、バガス廃菌床施用区では高い収量を示した。初期土壌と3ヶ月後土壌で比べると、β-グルコシダーゼ活性はバガス廃菌床施用区では上昇し、そのほかの処理区では減少した。プロテアーゼ活性はバガス150 g施用区をのぞき減少した。これは土壌中の易分解性有機物量は大きな減少は見られなかったことからバイオマスが減少したためだと考えた。 サトウキビの収量とそれぞれの測定項目の相関関係を調べたところ、β-グルコシダーゼ活性とはr= 0.909と強い正の相関関係を示した。そのほかの項目では、微生物バイオマス炭素とプロテアーゼ活性において、それぞれr= 0.220,r= 0.246と弱い正の相関を示した。一方、サトウキビ収量と微生物バイオマス窒素、FDA加水分解活性値においては、r= -0.772、r=-0.838と強い負の相関を示した。 以上のことから、バガス廃菌床の農地還元は、サトウキビ収量の増加、土壌pH、TN、OC、土壌の可給態窒素量の増加、土壌酵素活性の増加など,土壌の化学性,生物性に影響を与えていることが明らかになった.廃菌床特有の効果としては,サトウキビ収量の増加、土壌pHの上昇、FDA加水分解活性値の増加、β-グルコシダーゼ活性の増加などがバガス施用区との比較により明らかになった。バガスを農地還元する際には廃菌床が適していると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バガス廃菌床の農地還元による作物収量、農地への炭素貯留や窒素肥料削減への効果を主にポット試験レベルで結果を出すことができた。バガス廃菌床の施用により、化学肥料区と比較して土壌pHは高くなり、サトウキビ収量、土壌のTN、OC、可給態窒素量、酵素活性、FDA加水分解活性が増加した。以上のことから、バガス廃菌床の農地還元は、サトウキビ収量の増加、土壌pH、TN、OC、土壌の可給態窒素量の増加、土壌酵素活性の増加など、土壌の化学性、生物性に影響を与えていることが明らかになった。 今年度末に、その結果を受けて、現地圃場に赴き、来年度から実施する圃場試験レベルの研究対象地である、バガス廃菌床施用試験区の設置と区画割付を行い、来年度春からの廃菌床施用圃場試験開始に向けて最終準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(2023年度)4月に圃場試験を開始する。4月のバガス廃菌床施用直前に現地圃場の土壌断面調査及び表層土壌のサンプリングを行う。各試験圃場にバガス廃菌床を施用し、サトウキビを栽培する。栽培中期にあたる2023年9月にサトウキビの成長量を測定するとともに、土壌の諸性質、特に、土壌の化学性、物理性、生物性に及び土壌微細形態観察用の土壌試料を採取する。来年度秋から冬にかけて、採取したサンプルの測定、分析及び土壌薄片の作製、微細形態観察を行う。 上記の結果より、バガス廃菌床施用効果、特に、土壌中への有機炭素貯留効果について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者に支給
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