研究課題/領域番号 |
22K19137
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
二神 泰基 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60512027)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 白麹菌 / トランスポーター / 過剰発現 / 有機酸 / 2-オキソグルタル酸 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、麹菌において機能未知のトランスポーターを解析し、有用物質の高生産をもたらす排出・取り込み輸送体を同定することである。本年度は有機酸の排出輸送体をスクリーニングすることを目指し、先行研究で報告したクエン酸排出輸送体CexAのホモログをコードする11遺伝子を解析した。トランスクリプトームの情報に基づいて、これらの発現レベルは低いことが示唆された。そこで、白麹菌Aspergillus luchuensis mut. kawachiiのcexA破壊株において、翻訳伸長因子EF-1αをコードするtefA遺伝子のプロモーターにより各ホモログ遺伝子を過剰発現する株を構築し、細胞外の代謝物がどのように変化するのかをHPLCにより解析した。なお、cexA遺伝子破壊株は、クエン酸の分泌生産を防ぐために親株として使用した。また、各トランスポーター遺伝子の過剰発現カセットはATP Sulfurylas遺伝子(sC)マーカーを用いてゲノム上に単一コピーで組み込んだ。HPLC分析の結果、いずれの過剰発現株の培養上清においてもクエン酸濃度は変化しなかったため、11のCexAホモログはクエン酸排出輸送体ではないことが示唆された。次に、過剰発現株のうち2株において、培養上清に2-オキソグルタル酸が高濃度に蓄積したものがあり、当該ホモログは2-オキソグルタル酸の排出輸送体である可能性が示唆された。また、過剰発現株のなかには、培養上清の有機酸濃度に変化は認められなかったが、分生子着生量が低下したものがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、白麹菌において有機酸の排出輸送体に着目して過剰発現株の取得と解析を行い、培養上清に2-オキソグルタル酸を蓄積するようになる推定トランスポーターを見出した。本トランスポーターを解析することで、新規な2-オキソグルタル酸排出輸送体を同定できる可能性があり、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験で見出した推定2-オキソグルタル酸輸送体の機能を明らかにするために、詳細な機能解析を実施する。解析対象は、2遺伝子ある。まず、白麹菌において単独遺伝子破壊株、二重破壊株、相補株、GFP融合タンパク質発現株を構築する。これらの菌株が細胞外に分泌する代謝物をHPLCにより分析し、2-オキソグルタル酸を含む有機酸がどのように変化するのかを調べる。その際、菌体の乾燥重量を測定し、菌体量あたりの有機酸生産量を評価する。また、同様に細胞外のグルコース濃度をHPLCにより分析し、各有機酸の対糖収率を評価する。GFP融合タンパク質発現株は、蛍光顕微鏡により観察することで各推定トランスポーターの局在を解析する。 次に、昨年度構築したCexAホモログ過剰発現株の細胞外分泌代謝物をLC-MSにより分析する。 さらに、引き続き有用物質の排出および取り込みに影響を及ぼす可能性のある推定輸送体の過剰発現株の取得を継続的に実施する。構築できた菌株の細胞外代謝物をLC-MSにより分析し、その結果に基づいて詳細な機能解析を実施するトランスポーターをスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していたLC-MSによる代謝物解析の実施時期が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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